今月のニュースから

8月01日(月)居宅介護支援の事業所数が4年連続で減少 中規模化・大規模化、緩やかに進む
 厚生労働省が7月末に公表した「介護給付費等実態統計」で、今年4月の直近の状況が明らかになった。前年同月より487ヵ所少ない3万7831ヵ所。近年の推移はグラフの通りだ。2018年のピークと比較すると、今年はマイナス5.58%となっている。

 一方、居宅介護支援の費用額については右肩上がりが続いている。今年4月は432.04億円。昨年4月(413.99億円)より4.36%伸びていた。
 事業所数が減少していく背景には、居宅介護支援の中規模化、大規模化が緩やかに進んでいる状況もあるとみられる。

 

 居宅介護支援は赤字経営も珍しくないが、特に「特定事業所加算(*)」を算定しなければ十分な黒字を出すのは難しい。これを念頭に置いて、収益性を高めるためにケアマネジャーを増やすなどの手を打つ事業者がいる。スケールメリットも活かした質の高いケアマネジメントの実践を促すため、国もこうした動きを誘導してきた経緯がある。

 

* 特定事業所加算
 たとえば、複数人のケアマネの配置や24時間の連絡体制の確保、計画的な研修の実施などが要件。最も高い加算I(505単位)は、2人以上の主任ケアマネ、3人以上のケアマネの配置が必要。

 

8月02日(火)「施策の効果など検証を」 介護保険部会が法改正に向け議論
 厚生労働省の「社会保障審議会介護保険部会」が7月25日に開かれた。来年の介護保険法改正に向けた検討を進めており、同日は介護の人材確保、生産性向上について議論した。委員からは施策の効果や実効性を検証して取り組むよう意見があった。
 介護職員は2040年度に約280万人必要とされ、19年度比で約69万人増やす必要がある。
 そのため厚労省は、人材確保策として介護職員の処遇改善、介護助手や外国人など多様な人材の受け入れを進めつつ、介護現場の生産性向上に向けてロボットやICT(情報通信技術)の活用、業務改善、文書負担の軽減などにも取り組んでいる。
 委員からは人材確保策を推進するにあたり、「施策が人材確保、定着に結びついているか検証することが限られた財源の有効活用のために必要」(日本商工会議所の岡良廣氏)、「施策がどれだけ人材確保に結びついているのか明らかにして進めるべき」(日本労働組合総連合会の小林司氏)といった指摘があった。
 また、ロボットやICTの活用と人員配置基準緩和について「ロボット活用はサービスの質の担保の視点から検証すべき」(日本介護福祉士会の及川ゆりこ氏)、「テクノロジー活用でケアの手間が省けるわけではない。人の手の代替はできない」(日本看護協会の齋藤訓子氏)など慎重な検討を求める意見があった。
 そのほか「ロボット導入は小規模法人ではあまり進んでおらず格差が出てしまうのではないか」(全国老人福祉施設協議会の桝田和平氏)と懸念する声もあった。
 部会では次回以降、利用者負担の原則2割(現行は原則1割)も含めた給付と負担についても議論する。   (福祉新聞)

 

8月06日(土)自宅療養を希望する要介護者向けサービス「看多機」 創設10年…高齢化の進展でニーズ高まる
 介護保険制度のサービスとして、2012年度に創設された「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」。自宅療養を希望する中重度の要介護者が主な対象で、訪問看護や、デイサービスなどを組み合わせて提供する。今年で制度創設10年になるが、高齢化の進展でニーズが高まっている。利用の現場を訪れ、課題を探った。

 

胃ろう管理 家族に休息
 6月中旬、東京都足立区の看多機「まいほーむ北千住」では、要介護5の男性(91)が「泊まりサービス」を利用していた。11年ほど前に脳梗塞(こうそく)を患い、様々な介護サービスを利用してきたが、胃ろうで栄養摂取するようになった。家族だけで胃ろうの管理をするのは難しいため、医療処置もできるまいほーむ北千住でのサービスをフル活用しながら生活している。
 男性の妻(83)は「自宅ではたんの吸引などで、夜も寝られないことがある。時折夫が泊まりを利用することで私も休息が取れ、健康でいられる」と話す。
 まいほーむ北千住は、制度とともに10年近い実績があり、医療法人財団「健和会」が運営する。開設してから数年間は利用者が集まらず、「制度が想定した医療処置の必要な要介護者以外の受け入れが多かった」と看護師の伊藤智恵子さん(47)は振り返る。
 看多機の利用定員は、1事業所当たり上限29人と少人数のため、職員と顔なじみになって信頼関係を築きやすい。現在はこうしたメリットも周知が進みつつある。この施設では、既往症がある人や、在宅で看取(みと)りを希望する人など、医療ニーズがある利用者が増えているという。

 

看護師「頼れる存在に」
 「大丈夫? 気持ち悪くないですか」。優っくり看護小規模多機能介護喜多見(東京都世田谷区)では、看護師で管理者の間渕唯さん(32)が、「通い」利用者の血圧測定などの健康チェックをしていた。
 看護師の仕事内容は、多岐にわたる。利用者の必要に応じて、点滴や人工肛門の管理、床ずれの対応、輸血など様々な業務をこなす。利用者の自宅に訪問して処置することも多いという。間渕さんは「自宅で療養したいという人にとって、頼れる存在でありたい」と話す。
 要介護4の母親(90)が利用しているという女性(55)は、「体調が悪い時などに、臨機応変に母を任せることができるので安心だ」と述べる。今では平日5日間は「通い」を利用し、時折「泊まり」も使う。
 運営する社会福祉法人「奉優会」は、今後2年で、看多機を現在の2事業所に加えて、3か所増やす予定だという。高齢者の急増に対応して病院の増設を期待しにくい地域などでは、自宅での医療ニーズを満たすことができる看多機の存在感が高まっていると言えそうだ。

 

高まる需要 人材不足が課題
 「慣れ親しんだ自宅で穏やかに過ごしたい」と考える高齢者を、医療処置も含めて支援するのが「看護小規模多機能型居宅介護」の基本的な仕組みだ。  利用手続きを一度すれば、同じ事業所で四つのサービスを柔軟に組み合わせて利用でき、利用者や家族の負担軽減が期待できる。料金は、宿泊費や食費などを除き、利用状況にかかわらず要介護度ごとに月額一定だ。
 厚生労働省の資料などによると、今年2月現在、看多機の事業所数は850にのぼる。高齢者人口がピークを迎えるとされる2040年度には、利用者数は現在の約2倍の3万4000人に達する見込みだ。
 需要は高まっているが、事業所開設が順調に進むかは見通せない。多機能のため広めの施設面積が必要だが、土地代が高い首都圏では開設費用がハードルになる。看多機などの介護保険サービスで働く看護師は、足りていないという課題もある。
 日本看護協会の田母神裕美常任理事は「看多機を増やすには、介護現場で働く看護師の処遇改善や研修も必要だ」と話す。
◆看護小規模多機能型居宅介護 退院直後など心身の状態が不安定な時に、自宅療養を希望する要介護者に「訪問看護」「訪問介護」「通い」「泊まり」のサービスを一つの事業所で提供できる仕組み。医師の指示を受けた看護師が必要な医療処置をして、医療面でも家族を支援できる。略称は看多機(かんたき)。   (読売新聞社)

 

8月18日(木)地域密着型通所介護、事業所数が6年連続で減少 通常規模・大規模は過去最多に
 厚生労働省が公表している「介護給付費等実態統計」の最新のデータにより、現下の通所介護の事業所数が明らかになった。
 今年4月審査分で全国に4万3392事業所。地域密着型通所介護が更に減少した一方で、通常規模型・大規模型の通所介護が増加を続けていることから、総数としては変わらず横ばいとなっている。近年の推移はグラフの通りだ。

 

 地域密着型通所介護はこれで6年連続の減少。ピークは2016年の2万3763事業所で、そこからの減少幅は今年で2割(20.3%)を超えた。一方、通常規模型・大規模型の通所介護は一貫して増加しており、今回も過去最多を更新している。
 こうした動きの背景には国の政策がある。
 潮目が変わったのは2015年。介護報酬の大幅な引き下げにより、それまで事業所数が右肩上がりだった地域密着型通所介護の経営が難しくなった。採算が合わない事業所を閉鎖・統合する企業があるほか、新規出店を通常規模型以上とするところも少なくない。
 サービスが飽和状態に至り、地域密着型通所介護の展開が容易に認められない地域があることも影響している、との見方もある。   (介護ニュースjoint)

 

8月19日(金)集団感染と病床逼迫で高齢者施設内の療養者が増加 - コロナアドバイザリーボード分析・評価
 厚生労働省が18日に公表した第95回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの感染状況の分析・評価では、高齢者施設の集団感染の急増と病床逼迫で「実質的に施設内療養者が増加している」との見解を示している。
 医療提供体制に関しては、全国的に医療従事者の感染が増加していることで「十分に人員を配置できない状態が継続し、一般医療を含めた医療提供体制への負荷が長期化している」と指摘している。
 また、介護の現場でも「療養者及び従事者の感染の増加により厳しい状況が続いている」などと説明している。   (医療介護CBニュース)

 

8月26日(金)厚労省、特養の入所基準の見直しを検討 事業者から弾力運用を望む声=介護保険部会
 高齢者の特別養護老人ホームの入所基準について、厚生労働省は見直しを検討していく考えだ。今後の介護保険制度改正に向けた議論を進めている審議会(社会保障審議会・介護保険部会)の25日の会合で、このテーマを論点として扱う意向を明らかにした。
 既存の資源をより柔軟に、効率的に活用していくこともできるのではないか、という発想がベースにある。
 厚労省は審議会で、「入所申し込み者の実態、高齢化の進行状況やそれに伴う介護ニーズは地域によって異なる」と指摘。「特養の入所基準のあり方をどう考えるか」と提起した。あわせて、「地方を中心に、高齢者人口の減少により待機者が減少している、定員が埋まらず空床が生じている、という声がある」との認識も示した。
 現行、特養の入所基準は原則として要介護3以上の高齢者とされている。要介護1、2の高齢者の入所が認められるケースもあるが、それはやむを得ない事情で在宅生活が難しい場合の特例という位置付けだ。
 厚労省の論点の提示を受けて、小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は、「在宅サービスを十分に受けられない地域もある。要介護度のみで入所を判断するのではなく、利用者本位の現実に即した対応とすべき」と主張。津下一代委員(女子栄養大学特任教授)は、「施設の有効活用をきちんと視野に入れていかなければならない」と述べた。   (介護ニュースjoint)

 

8月29日(月)技能実習生ら外国人介護職員、就労直後から人員配置基準の算入対象に 厚労省提案
 厚生労働省は26日、介護保険サービスの運営基準や報酬などを話し合う審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)を開催し、EPA(経済連携協定)や技能実習制度のスキームで働いている外国人の介護職員について、一定の要件下で就労開始直後から人員配置基準の算入対象とするルールの見直し案を提示した。ただし、委員から慎重論が相次いだため結論は持ち越しとなった。
 EPAや技能実習の外国人は現行、就労開始から6ヵ月経たないと人員配置基準の算入対象とならない。日本語でのコミュニケーションも含めた個々の能力が、まだ必ずしも十分でない可能性があることを踏まえた措置だ。一方、在留資格「介護」や特定技能のスキームで働く外国人については、就労直後から人員配置基準に算入できる扱いとされている。 厚労省は審議会で、人員配置基準に算入する介護職員の範囲の考え方について、「経験や雇用形態などを問わず、直接処遇に携わる職員を念頭に置いている」と説明。「EPAや技能実習の外国人にはそもそも、一定程度の日本語能力、介護に関する能力を有することが要件として課されている」と理解を求めた。人員配置基準に算入する際の具体的な要件としては、
○ 受け入れ先の施設を運営する法人の理事会で審議・承認するなど、適切かつ透明性の高いプロセスを経ること
○ 上記のプロセスを経て外国人を受け入れることを、都道府県へ報告すること
などを提案した。
 ただ審議会では委員から、目下の現場の実態やルールを見直した際の影響、利用者の意向などの把握が不十分との批判が続出。データの収集・分析を重ね、見直しの妥当性をめぐる議論を更に深めるべきとの意見が大勢を占めた。
会合後、厚労省の担当者は批判を踏まえて継続審議とする方針を表明。見直しを検討していく理由については、「制度上の取り扱いを日本人と同等にすることで、施設内の均衡待遇の実現など外国人の処遇改善につなげることもできる」と話した。   (介護ニュースjoint)

 

8月30日(火)社会保障給付費、132兆円=20年度、コロナ影響で最高更新―厚労省

 

 

 

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は30日、2020年度に年金、医療、介護などに充てられた社会保障給付費が前年度比6.7%増の132兆2211億円だったと発表した。   (時事通信社)

 

 

 

 

 

8月31日(水)政府、介護職の処遇改善へ介護費の見える化を推進 事業所の収入・人件費の配分など分析
 介護サービス事業者へ支払われている介護報酬は、介護施設・事業所の中で実際にどのように使われているのか? 
 政府はこれをクリアにする“介護費の見える化”に取り組む。介護職の更なる処遇改善を具体化する環境を整備する狙い。現場の実態をできるだけ正確に掴み、より合理的・効果的な施策の立案につなげたい考えだ。
 30日に開催した「公的価格評価検討委員会」で、“介護費の見える化”に向けた基本的な考え方を提示。厚生労働省の「経営実態調査」なども活用しつつ、
○ 介護施設・事業所の収入、支出、資産の内訳がどうなっているか
○ 収入が人件費、人件費以外の費用、利益にどう分配されているか
○ 人件費が職種ごとにどう分配されているか
などを分析していく意向を示した。
 会合後に取材に応じた政府関係者は、「国の政策として行った処遇改善策が実際にどんな効果を及ぼしているのか、しっかり把握する必要がある」と説明。「介護職らの処遇改善には今後も政府として取り組んでいく。“介護費の見える化”を図りながらより適切な処遇改善に努めていく」と話した。当面のスケジュールについては、「まだ定まったものはない」と述べるに留めた。
 この日の会合では、政府の考え方をベースに“介護費の見える化”を進めていくことで一致。委員からは、「ケアマネジャーなど介護職員以外の職種の処遇にも留意すべき」との声もあがった。   (介護ニュースjoint)

 

8月31日(水)介護給付、初の10兆円超え 20年度の事業報告 厚労省
 厚生労働省は31日、2020年度の介護保険事業状況報告を公表した。
 利用者負担を除いた介護保険給付費は前年度比2.7%増の10兆2311億円で、初めて10兆円を超えた。進む高齢化を背景に、介護保険制度が始まった00年度から過去最高を更新し続けている。   (時事通信社)

 

8月31日(水)認知症GH協会、原則入院の堅持求める 事業所内療養で感染拡大も
 日本認知症グループホーム協会(河ア茂子会長)が8月16日に公表した「新型コロナ第6波(1〜6月)の感染状況等調査」の結果によると、回答した604事業所のうち19%で感染が発生していた。感染した入居者の大半は事業所内で療養せざるを得ず、入院できないため感染が拡大した事業所が64%あった。1事業所の最大感染者数は入居者17人、職員14人だった。
 同協会は「小規模な事業所で入居者が認知症というもとでは感染発生は即クラスターとなる。入居者が感染したときは原則入院を堅持してほしい」と訴えている。
 調査では、入院できなかった理由として「コロナの治療ができない」「ベッドに空きがない」に次いで「認知症のため」が挙げられた。
 入院できない場合の対応は、大半がゾーニング(感染防止の区分け)などを行っていたが、特段のことはできなかった事業所も12%あった。
 感染発生時から職員体制が困難になった事業所は63%あり、多くは法人内の応援態勢で乗り越えた。自治体による職員応援態勢については「ない」が56%を占め、「ある」の24%より多かった。
 事業所内療養について「可能」との回答は8%。「可能ではない」「好ましくない」を合わせると63%となり、全体としては否定的だった。理由は「事業所は小規模であり物理的にもゾーニングが困難」「認知症の人はコロナの理解が難しく徘徊はいかいなどもあるため隔離が困難」「介護職員の医療知識や経験が不十分で対応困難」などが挙がった。
 また、入居者の心身状態への影響があるとの回答は83%あり、ADL(日常生活動作)などの低下、認知症の進行、会話の減少などが挙げられた。   (福祉新聞)

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