企業評価の現状と非財務情報の定義

近年、取引先や機関投資家、金融機関が企業の価値を評価する際、財務諸表に基づく定量評価など伝統的な手法が中心でした。しかし社会変動に伴い、企業が「今後新しい価値を創造しうるのか」、「持続的な成長が見込めるのか」といった定性情報や事業活動を評価する必要性等、これらを重視する方向性が際立つようになってきました。しかし、前述の通り、財務諸表は過去の実績に基づく定量評価であり、こうした新しい要素を正しく評価することはできません。そこで「企業の潜在的な価値」を測るものとして近年改めて注目されてきたのが、「非財務情報」“も“活用した企業価値の評価です。
企業の潜在的な価値(定量的な評価に至っていない価値=非財務情報)を踏まえた「総合的企業価値評価」へシフトが進んでいると言えるでしょう。
この「非財務情報」とは、企業が投資家や株主、債権者などに対して開示する情報のうち、財務諸表などで開示される情報以外の情報を指します。企業が定期的に市場に開示する各種文書、例えば有価証券報告書やCSR報告書、統合報告書、サステナビリティレポートなどで報告される情報がこれにあたります。

 

[非財務情報の例]
(1) 経営理念
(2) 経営戦略・経営計画
(3) コーポレートガバナンス
(4) 環境や社会へのコミットメント状況
(5) 事業リスク
(6) 事業機会
(7) サステナビリティをめぐる課題への取り組み

 

ただ、このような情報の取り扱いは容易ではなく、いずれも発信する側の思いやニュアンスが含まれる”ゆらぎが含まれる”情報であると言えます。更に、こうした情報には、知的財産権による未来の利益(特許や独占的技術)、持続する企業ブランド(いわゆる''のれん'')、人的資本(優秀な人材・後継者)など、財務情報からは見えてこない、企業価値を評価する上で重要な情報が含まれています。
ゆえに、企業にとってのステークホルダーは、こうした情報に基づいて、企業との関わり方を意思決定する形へと変化してきているのです。
今後、事業会社はこれをどう適切に開示していくのかが今まで以上に問われ、一方で企業を評価する側の金融機関や投資家も、企業の非財務情報の評価において第三者によるSNSに記載されているようなオルタナティブデータ(企業による公開情報以外の外部情報)を利用せず、企業が開示した非財務情報に基づき企業評価することが重要となります。

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