今月のニュースから

5月02日(月)2025年問題って?…団塊世代が75歳以上になり、医療・介護費膨らむあんしんゼミ

 

ゼミ生 「2025年問題」という言葉を聞きました。3年後に何が起きるのか教えてください。

 

医療費 国の財政圧迫

教授 「団塊の世代」という言葉は知っていますか。戦後間もない1947〜49年生まれの人のことで、この3年間は毎年約270万人が生まれました。昨年1年間の出生数は約84万人だったのと比べると、約3倍の規模で子どもが生まれた計算になります。その人たちが全員75歳以上になるのが2025年です。「高齢者の高齢化」が進む節目の年と言えますね。

ゼミ生 高齢化はどのくらい進んでいるのですか。
教授 日本の人口に占める75歳以上の人の割合は1990年は4.8%だったけど、2025年には17.8%に増える見通しです。高齢人口がピークに達する40年には、5人に1人が75歳以上になりそうです。
 ゼミ生 長生きするお年寄りが増えるのはいいことですが、どうして「問題」なのですか。
 教授 年を取れば、病気やケガをしやすくなります。日常生活では介護が必要になることもあります。19年度の1人あたりの国民医療費は、65歳未満が19万円でしたが、これに対して、75歳以上は93万円です。つまり75歳以上の人が増えると、医療や介護の費用が膨らみ、国の財政がさらに厳しくなることが問題視されているわけです。
 年金などを含めた25年度の社会保障給付費は約140兆円と、10年前と比べて2割増える見込みです。増え続ける社会保障費は税収だけでは賄えないので、足りない分は借金をして将来世代に負担を先送りしています。  
ゼミ生 働いて税金や保険料を納める人は減っているのですよね。
介護人材 32万人不足
教授 国は対策として今年10月から、一定の収入がある75歳以上の人が払う医療費の窓口負担を引き上げることを決めました。将来世代に負担を先送りしないために、高齢者の一部に負担範囲を広げているわけです。
ゼミ生 僕も年を取ったらお金の面で苦労しそうだな。
教授 お金だけではなく、介護人材の不足も深刻です。厚生労働省の試算では、25年度に介護の担い手は約32万人不足する見込みです。待遇や労働環境の改善などの対策が急がれます。

 

5月07日(土)介護現場逼迫、背景に慢性的な人手不足
 新型コロナウイルス禍で高齢者らを在宅で介護する訪問介護の現場が苦境に立たされている。ホームヘルパーにも高齢者が多く、重症化リスクを伴うからだ。その一方で、現場が逼迫(ひっぱく)する背景に、業界の慢性的な人手不足がある。コロ禍で深刻さが浮き彫りとなり、処遇改善など支援策の拡充が急がれる。

 

厚生労働省によると、全職業の有効求人倍率は3月時点で1・13倍。介護サービス業に限れば、3・39倍と相応の開きが見られる。令和2年に同省が公表したホームヘルパーの有効求人倍率は約15倍だった。

 訪問介護事業を行う「でぃぐにてぃ」(東京都新宿区)の吉田真一代表(48)は「超高齢化社会において介護はもはやインフラ。誰もが必要となる可能性があるのに、長時間労働や給与など待遇が改善されず、使命感だけではもう持たない」と窮状を訴える。
 吉田代表が特に問題視するのは、報酬加算の制度だ。医療分野では診療報酬制度に基づき、感染者に対する訪問診療や訪問介護で加算制度がある一方、訪問介護のヘルパーらにはない。 1月には他の事業者とともに訪問介護にも加算を求める署名活動を実施。集まった約3万7千人分の署名を厚労省宛てに提出した。
 こうした中、政府は介護職などの賃金を2月分から3%程度(9千円相当)引き上げ。厚労省も3月、感染者や濃厚接触者に対応するヘルパーに介護事業所が手当てなどを独自に支給した場合、既存制度を活用する形で全額を公費でまかなうと都道府県に通知した。
 吉田代表は「介護職は社会機能の維持に必要なエッセンシャルワーカー。継続的な支援制度の拡充が必要だ」と話す。   (産経新聞)

 

5月18日(水)介護施設の入居者に対する身体拘束 ゼロへの努力…「責任回避」からの反省
 介護施設では、入居者の体の一部を縛ったり、ベッドを柵で囲んだりする身体拘束は「人間の尊厳を奪う行為」として、原則的に禁止されている。ただ、限定した用途では認められているほか、施設側の管理上の都合などから、身体拘束をする現場はなかなかなくならない。時間をかけて拘束ゼロに取り組み、実現した施設を訪ねた。

 

10年間の取り組み
 「身体拘束をゼロにすることを目指してから、昨年6月に実現するまで、およそ10年かかりました」。千葉県柏市の特別養護老人ホーム「沼風苑」(定員112人)の副施設長、佐久間尚実さん(60)は振り返る。
 同施設ではかつて、「転落防止を理由に、約30人のベッドが柵で囲まれた状態だった」(佐久間さん)という。柵で囲むことは、厚生労働省の施設運営基準などに基づくと「身体拘束」に該当するが、入所者の安全を管理する施設側にとっては必要だと考えていた。ただ、入所者側からみると、不当に身体拘束されていると判断されかねない状態だった。
 このほか、認知症の入所者の場合、鼻に通したチューブを自分で抜かないように、両手にミトン型の手袋をはめさせたり、ベッド柵に両手首を縛り付けたりしている事例もあったという。

 

専門家の指摘が契機
 「私たちの当たり前が、実はおかしいのかもしれない」。同施設の介護主任、岡田麻衣子さん(38)が、気づき始めたのは約10年前だ。出席したセミナーの専門家から指摘を受けたためだ。早速施設で現状を改める取り組みを始めたが、実際は簡単ではなかった。
 まず取り組んだのは、入所者を丁寧に観察することだった。体をかきむしらないように両手にミトンをはめていた90歳代の女性を注意深く観察した。「食事中はかいていないことに気づいた」と岡田さんは話す。そこで「することがないのが原因かもしれない」との仮説を立てた。そして女性をほかの入居者との交流の場に連れ出してみると、かきむしる行為は徐々におさまったという。
 ベッド柵についても、職員が気になる部屋を頻繁に巡回したり、離床を感知するセンサーを設置したりすることで、取り外しは進んでいった。個別の安全を確認しながら一人ずつ半年から1年かけて、柵を外していったという。

 

ケアの質が向上
 さらに外部からのチェックも強化した。職員の認知症ケアの様子を、専門家に来てもらって、評価を受けた。こうした取り組みの中で佐久間さんは、「身体拘束ゼロとケアの質の向上は同じ方向にあることが分かってきた」と話す。  沼風苑では拘束を撤廃したことで、大きな事故につながったケースは生じていないという。岡田さんは現場での取り組みを通じて「身体拘束はお年寄りの安全のためではなく、自分たちの責任回避のためにしていたのだ」と気付かされたという。
 入所者の家族からは依然として「施設に迷惑をかけたら申し訳ない」「けがをさせたくない」と、拘束を含めたケアを施設に求めることもあるという。こうした家族に対して施設側は、見守りへの考え方を説明するなど理解を得る努力を重ね、拘束ゼロへの取り組みを堅持している。

 

絶えぬ拘束 なくす難しさ

 

 身体拘束を撤廃した施設がある一方、高齢者虐待にあたる身体拘束は、増加に転じている。

 「家族と思ってお世話します」。そんな理念を掲げている山梨県内のある介護老人保健施設で昨年2月、男性介護福祉士が入所者2人に、不適切な身体拘束を行っていたことが発覚した。
施設を指導監督する自治体によると、この職員は昨年2月上旬の夜勤時、障害のある60歳代の男性に対し、手をタオルできつく巻いたり、ミトンをはめたりして、看護師を呼び出す「ナースコール」のボタンを押せないようにした。また、認知症がある90歳代の女性に対しても、部屋から出られないように身体拘束をした。職員は調査に対し、約1年半前から身体拘束をしていたことを認めた。同僚に「動けないようにすれば、仕事が楽でいい」などと話していたという。
施設側の報告で問題を把握した自治体は、立ち入り調査を実施。高齢者虐待や介護放棄に相当するとして、施設に再発防止と改善報告を求めた。
 原則禁止の身体拘束だが、国は、
〈1〉命や身体に危険が発生する可能性が高い
〈2〉他に手段がない
〈3〉一時的な対応である――
という3要件を全て満たせば、例外的に認めている。ただ、今回のケースでこの職員は3要件を満たすかどうかを、施設側に相談していなかった。
厚生労働省の高齢者虐待に関する調査によると、こうした例外には該当せず、虐待とみなされる身体拘束は、2020年度は全国で317人が受けていた。2年前と比べて50%以上も増加しており、虐待をなくすことの難しさが浮き彫りとなった。
同省高齢者支援課の担当者は、「認知症の症状が重い人が施設に増え、知見と技術が不足している人が対処したことも背景にあるのではないか」と話す。今後は研修などを通じて、ケアの技術力を高めていくなどの改善策が求められそうだ。   (読売新聞社)

 

5月19日(木)首相、介護現場の負担軽減へデータ共有基盤整備
岸田文雄首相は19日、介護現場の負担を軽減するため、ケアプラン(介護サービス計画書)のデータを電子的に共有できる基盤を今年度中に整備し、全国展開を目指す考えを示した。東京都内の介護施設を視察後、記者団に明らかにした。 首相は「ICT(情報通信技術)を介護現場の負担軽減、介護サービスの質の向上という観点から活用することは重要な視点だ」と述べた。 首相は介護関係者と車座で意見交換した。介護現場でのICT活用をめぐり、事務処理時間が減り利用者へのケアの時間が充実したといった利点と同時に、導入コストの高さなどを指摘する意見も出た。   (産経新聞)

 

5月20日(金)「特定技能」の外国人6万4千人に 1年前の約3倍
 日本で働ける「特定技能」の資格で在留する外国人が、導入から3年となる今年3月末時点で6万4730人(速報値)となり、1年前から3倍近くに増えた。出入国在留管理庁が20日に発表した。
 コロナ禍で新規入国が制限される中、国内にいる外国人が「技能実習」などの在留資格から特定技能に移行したケースが9割近くを占めた。
 特定技能は労働力不足に対応するために2019年4月に始まった制度で、政府は当初は5年間で最大約34万5千人を見込んでいた。14分野で最長5年働け、資格を得るには分野別の技能試験と日本語試験に合格するか、技能実習を3年間修了する必要がある。
 6万4730人を分野別でみると、飲食料品製造業が2万2992人(全体の35・5%)で最も多く、農業8153人(12・6%)、介護7019人(10・8%)と続く。一方、宿泊は124人(0・2%)、外食業は2312人(3・6%)にとどまり、コロナ禍での需要の落ち込みを反映して割合が減った。
 国籍別では、ベトナムの4万696人が最多で6割超を占め、フィリピンの6251人、インドネシアの5855人と続いた。   (朝日新聞社)

 

5月20日(金)LIFEデータ、一部事業所で記録上書きの恐れ - 厚労省老健局老人保健課が都道府県に事務連絡
 厚生労働省老健局老人保健課は、科学的介護情報システム(LIFE)に関する事務連絡(17日付)を、都道府県の介護保険主管課(室)に出した。LIFEに登録されているデータについて、一部の事業所で過去の記録が上書きされる恐れがあることが確認されたという。
 事務連絡では、LIFEホームページの「操作マニュアル等」に掲載されている「操作説明書(本編)」を参考に、過去の入力内容がLIFEに正しく反映されているか確認するよう求めている。
 確認する際は、全利用者を確認する必要はなく、「同一の様式を複数回登録した数名の利用者」を確認することで、上書きの有無を確認できる。過去の記録が上書きされている場合、直近に取り込んだ記録だけが引用されるため、ADL利得の計算ができないという。   (医療介護CBニュース)

 

5月23日(月)排便・排尿を自動検知し記録 NEC子会社が開発、介護の負担を軽減
 トイレに付けた装置で排便・排尿を自動検知し、スマホアプリに通知する「サニタリー利用記録システム」をNEC子会社のNECプラットフォームズ(東京都千代田区)が開発し、23日に受注を開始したと発表した。老人ホームなどの介護施設向けに販売していく。介護職員の作業負担軽減に役立ちそうだ。
 洋式トイレの便座に排せつ検知ユニット、トイレの横に制御ボックスを外付けする。検知ユニットで収集した排せつデータをAIで分析し、便の量や状態、排尿の時間などを、介護職員のスマートフォンの専用アプリに知らせてくれる。
 収集したデータはプライバシー保護のため、インターネット上のクラウド基盤を活用せず、排せつ検知ユニット内部でデータを処理する「エッジAI」とよばれる手法を採用した。スマホの専用アプリは、便の画像を記録するアプリを開発しているベンチャー企業、ウンログ(東京都渋谷区)と共同開発した。
 このシステムの活用により、トイレで着座が長時間続いた場合に駆けつけて介助するなど、付き添いを必要最小限にする効果も期待される。受注に先立ち、仙台市内の特別養護老人ホームで検証したところ、職員1人あたり平均月22時間の作業時間が減ったといい、離職率が高い介護施設の働き方改革に貢献しそうだ。トイレを利用する施設入所者らのプライバシーの確保も図れる。同社は「排せつ物などのデータを集めることで、入居者の健康状態の把握などにも役立つようなものにしていきたい」としている。
 排せつ検知ユニットと制御ボックスの本体はオープン価格だが、24万円前後の見通し。別途月1800円の利用料がかかる。7月22日に出荷を始め、3年間で2万台の販売を目指す。   (産経新聞)

 

5月27日(金)規制改革会議、介護施設の人員配置基準の「特例的な柔軟化」を提言 今年度中の論点整理も要請
 政府の規制改革推進会議は27日、これまでの議論を総括した答申「コロナ後に向けた成長の起動」をまとめた。
 介護も重点分野の1つ。次のような「基本的考え方」が記されている。
「深刻化している人材の不足や処遇の状況を踏まえ、10年先、20年先をも見据えつつ、必要な人に必要な介護サービスを提供し続けられる持続的な制度を構築する必要がある」
 具体策としては、介護施設などの人員配置基準の「特例的な柔軟化」を盛り込んだ。
 まずは先進的な特定施設(介護付きホーム)などに絞って検討を進めるよう求めた。人員配置基準を思い切って緩和する構想に介護現場から強い懸念の声が噴出したことも踏まえ、一部に限った措置から徐々に対象を広げていく道筋を描いた格好だ。
 センサーをはじめとするテクノロジーのフル活用やビッグデータの解析、介護助手の配置などを前提とすることを提言。人員配置基準の緩和につなげていくため、今年度中を目途に論点を整理するよう厚生労働省に要請した。結論を得る時期は、2024年度の介護報酬改定も念頭に「遅くとも2023年度」とした。                  
 厚労省は今年度も介護現場での実証事業を行う。テクノロジーのフル活用などでサービスの質を維持できるかどうか、こうした取り組みを通じて基準緩和の是非を慎重に検証していく構えだ。   (介護ニュースjoint)

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