(2030年)全てが加速する世界に備えよ

『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』
ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー(土方 奈美 訳)
                (目次以下の項目は、独断で抜粋したもの)

 

第1部「コンバージェンス」の破壊力
    The Power of Convergence
第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる
     ・「空飛ぶ車」は現実になる
     ・ハイパーループ
     ・アバターとロボットの時代が来る
 第2章 エクスポネンシャル・テクノロジー パート1
     ・量子コンピューターと「ムーアの法則」の終わり
 第3章 エクスポネンシャル・テクノロジー パート2
     ・仮想現実
     ・拡張現実
     ・3Dプリンティング
     ・「パーソナライズされた医療」の時代が来る
 第4章 加速が「加速」する

 

第2部 全てが生まれ変わる
 第5章 買い物の未来
 第6章 広告の未来
 第7章 エンターテイメントの未来
 第8章 教育の未来
 第9章 医療の未来
     ・人体の部品交換
     ・モバイルヘルスの時代が来る
     ・遺伝情報を読み、書き、編集する
     ・ロボット外科手術の未来
     ・細胞医療
     ・新薬開発の未来
 第10章 寿命延長の未来
     ・「老化」は克服できる
     ・寿命脱出速度
 第11章 保険・金融・不動産の未来
 第12章 食料の未来

 

第3部 加速する未来 The Faster Future
 第13章 脅威と解決策
 第14章 五つの大移動が始まる

 

アプライド・マテリアルズの最高技術責任者、オムカラム・ナラマスはこう説明する。
「今日のスマホと同じものを1980年代につくろうとすれば、コストは1億1100万ドル、高さは14メートル、そして200キロワットの電力を消費したはずです。
ここからも材料科学の進歩の威力がわかるでしょう」

 

スマートフォンが広く普及し始めて10年以上が経とうとしています。

 

スマートフォンひとつあれば、遠くに住む全然知らない人とSNSで気軽に意見を交換することができたり、気になる映画を動画配信サイトですぐに見ることができたり、お腹が空いたらフードデリバリーサービスを簡単に依頼できたり、と実にさまざまな欲望を満たすことができます。その一つ一つは小さな変化かもしれませんが、俯瞰してみると、私たちの生活や消費のありようは、スマートフォンが普及する以前とは大きく変化しています。

 

そして、技術は今もこれまで以上のスピードで発展を続けています。従って5年後、10年後のわたしたちの生活や社会は少しずつ、けれども確実にこれまでとは違うものになっていくでしょう。

 

これからの私たちの社会を変えていくサービスや技術はどのようなものなのでしょうか?

 

今回は、10年後、2030年の未来に対して最先端の予測を試みる書籍『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』をご紹介します。

 

イーロン・マスクの親友であり、アントレプレナーの著者2人が語る「加速」する未来像

 

今作はテスラのCEOであるイーロン・マスクの盟友で22のスタートアップを立ち上げたシリアルアントレプレナーであるピーター・ディアマンディスと、同じく起業家で、ピューリツァー賞候補にもなったジャーナリストのスティーブン・コトラーが手がけた書籍です。

 

小売、広告、エンタメ、交通、教育、医療、長寿、金融、不動産、環境など幅広い分野を題材に起業家たちの間で注目されている最新技術を取り上げて2030年の未来が論じられています。

 

紹介される具体的な製品やサービスの中には空を飛ぶ車人体の部品交換、VRの世界での土地購入などまさにSFさながらの物ばかり。

 

とはいえ今の生活と比較した時に「そんな生活実現できるのだろうか」という疑問が頭をよぎります。

 

フィクションのようなサービスを短期間で実現させる背景には加速度的に変化する技術があります。

 

短期間で圧倒的な変化を遂げる技術の背景とは?

 

変わらないのは「変化が続く」という事実だけであり、変化は加速する一方だ。

 

短い期間で大幅な進化を遂げる技術。その背景には3つの大きな増幅要因があるといいます
1つ目がコンピューティング能力の指数関数的な成長、
2つ目は加速度的に変化する技術の融合(コンバージェンス)です。
さらにこれらの副産物となる副次的効果が3つ目の増幅要因として挙げられます。

 

これらの要素が複合的に作用し、技術が加速度的に進化していく(エクスポネンシャル・テクノロジー)と本書では語られています。

 

そしてこのような技術の進化には以下の6つのステージがある、と言われています。

 

ステージ1 デジタル化
コンピューターは、時間の経過とともにコストはそのままに性能が指数関数的が上がります。これは「ムーアの法則」と呼ばれる法則です。従ってある技術がデジタル化されれば、指数関数的に性能は上がっていきます。さらに、量子コンピューティングのコストが下がり性能が上がれば、ムーアの法則の強化版とも言える「ローズの法則」にのっとり、さらに早く性能はあがっていくと考えられています。

 

ステージ2 潜行
エクスポネンシャル・テクノロジーはその指数関数的な成長に伴って、初期は緩やかな変化しか起こりません。従って、新たな技術の登場に一時的に大きな注目が集まっても、その変化に緩やかさによって世間の興味関心がそれてしまう場合があります。この過程を潜行と呼びます。

 

ステージ3 破壊
技術が十分に成長し、その後も加速度的な成長を継続することが期待された結果、既存の製品、サービス、市場、産業よりも優位になり、既存のものを破壊していく過程。

 

ステージ4 非収益化
以前と同じコストでも性能が格段に上がり、同じ製品、サービスを維持するためのコストが必要とされるコストが縮小・消滅します。

 

ステージ5 非物質化
製品がクラウドや端末で操作可能なものになり、実体が必要と無くなる過程。

 

ステージ6 大衆化
ある技術の性能が高まることでそれをつかった製品、サービスが安価で一般的なものになり、多くの人に使われるようになること。

 

今作によると空飛ぶ車から意識のアップロード、宇宙への移住などは技術の加速度的な成長で近い将来実現可能なものになると語られています。
一方で技術がどんなに変わっても人間の感受性や法制度などはなかなか変化できないものです。

 

作中でも現在手にしているものと引き換えに未来に何か新しいものが手に入ったするとそれが今のものよりずっと価値が低いのではないかと疑念を抱いてしまう「損失回避性」という認知バイアスが取り上げられています。

 

実際現実においてもハンコの電子化に非常に時間がかかったり、コストの高い選択的夫婦別姓などの法制度の改正等についても様々な議論がありなかなか前に進まない状態です。

 

どれだけ技術が変わっても人や法制度が変わらない限りはフィクションのような未来は訪れないのではないかと感じます。

 

そうした中で今作のような作品に触れることで想像力を培いより新しい未来へと議論を進めることができるのではないでしょうか?

 

本書は多彩なビジネス分野における「近未来」が提示されており、分量は多いものの、それぞれ独立して読むこともできるため、興味関心のある分野や仕事で関わるであろう分野にしぼって読むこともできます。

 

新たな技術を迎え入れるときに私たちに必要なものはどんなものなのか、障壁となるのはどのような制度や法律なのか、そして新たな技術が到来したときに破壊されるものは一体どのようなサービスや製品なのか、今のうちから思いめぐらせておくことは非常に重要です。

 

ぜひ未来に向けて本書を読んでみて下さい。ちなみに本書の原題はThe Future is Faster Than You Think.(未来はあなたが考えているよりも速い)となっています。

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