老化は治療できる

健康長寿を可能にする科学とテクノロジー
 全米ベストセラー『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』で、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏(ハーバード大学医学大学院遺伝学教授)は、老化は治療できる病であると主張する。本書から一部を抜粋・編集してお届けする。

 

 DNAをモニターすることで、医師は病気が顕在化するずっと前に気づけるようになる。がんについても、何年も早い段階から見つけて闘うことができる。感染症にかかったら、その正体はものの数分で突き止められる。

 

 心拍に乱れがあれば、車の座席が知らせてくれる。呼気を分析すれば、免疫疾患を発症しつつあることがわかる。キーボードの打ち方からは、パーキンソン病や多発性硬化症が早期に発見できる。

 

 医師は自分の患者について、今とは比べ物にならないほど豊富な情報を手にすることになり、しかも患者が実際に病院に来るかなり前からそのデータにアクセスできる。医療ミスや診断ミスは大幅に減る。このうちどれか1つでも実現すれば、健康な寿命が数十年分追加されてもおかしくない。
 また、老化が「避けて通れない人生の一部」などではないことが受け入れられれば、皆もっと自分の体に気をつけるようになるのではないだろうか。

 

 食事に気をつけながら活動的に暮らせば、健康寿命が10年延びると期待しても決して無謀ではない。
 遺伝子改変を施した家畜の体内で臓器を丸ごと育てたり、3Dプリンターで臓器を印刷したりして、それを私たちが移植できるようになる。

 

 現時点で、先進諸国の平均寿命は80歳を少し上回るくらいだ。

 

 「平均」というからには、人口の半分はその数字を上回ることを意味する。確かに、さまざまな科学技術の進歩がすべて足し算になるとは限らないし、食事に気をつけて運動する人ばかりでもないだろう。
 しかし、忘れないでほしいのだが、私たちが長く生きれば生きるほど、まだ予見できない医療の画期的な進歩の恩恵を受ける確率は高まる。

 

 

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