遺言

 遺言(ゆいごん、いごん、いげん)とは、日常用語としては形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいう。日常用語としてはゆいごんと読まれることが多い。このうち民法上法制度における遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされている(民法960条)。
 遺言の最も重要な機能は、遺産の処分について、被相続人の意思を反映させることにある。被相続人の意思である遺言を尊重するため、相続規定には任意規定が多く(ただし遺留分規定等強行規定も少なくない)、遺言がない場合は、民法の規定に従って相続が行われる(これを法定相続という)。これに対し、遺言を作成しておくと、遺産の全体または個々の遺産を誰が受け継ぐかについて自らの意思を反映させることができる。
遺贈の方法により、相続人以外の者に遺産を与えることも可能である。

 

1、自筆証書遺言 自筆証書遺言は遺言者による自筆が絶対条件となっている。
遺言書の全文が遺言者の自筆で記述(代筆やワープロ打ちは不可)
日付と氏名の自署 押印してあること(実印である必要はない)
なお、2018年相続法改正により自筆証書遺言に付属させる財産目録に限ってパソコンなど自筆以外で作成することができるよう緩和された(財産目録が複数のページに及ぶときは各ページ、両面にあるときは両面に署名押印を要する)。
また、自筆証書遺言の遺言書に銀行通帳の写しや登記事項証明書を添付することも可能となった。
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。ただし、2020年7月10日より法務局における遺言書の保管等に関する法律が施行され、法務局において保管されている遺言書については、遺言書の検認の規定は適用されない。

 

2、公正証書遺言
遺言内容を公証人に口授し、公証人が証書を作成する方式。証人2名と手数料の用意が必要となる。推定相続人・受遺者等は証人となれない。公証人との事前の打ち合わせを経るため、内容の整った遺言を作成することができる。証書の原本は公証役場に保管され、遺言者には正本・謄本が交付される。遺言書の検認は不要である(1004条2項)。公証役場を訪問して作成するほか、公証人に出向いてもらうことも可能である。

 

3、秘密証書遺言
遺言内容を秘密にしつつ公証人の関与を経る方式。証人2名と手数料の用意が必要であるほか、証人の欠格事項も公正証書遺言と同様である。代筆やワープロ打ちも可能だが、遺言者の署名と押印は必要であり(970条1項1号)、その押印と同じ印章で証書を封印する(同項2号)。代筆の場合、証人欠格者以外が代筆する必要がある。遺言者の氏名と住所を申述したのち、公証人が証書提出日及び遺言者の申述内容を封紙に記載し、遺言者及び証人と共に署名押印する。遺言書の入った封筒は遺言者に返却される。自筆証書遺言に比べ、偽造・変造のおそれがないという点は長所であるが、紛失したり発見されないおそれがある。
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。

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