老化とは

 人は生まれてから亡くなるまで、常に何かしらの変化が起きています。
ある時までは「成長」と呼ばれますが、人として成人し、成熟期を迎えると、そこから先は「老化」と呼ばれるようになります。もちろん、これは誰にでも起こる変化ですが、そのスピードには個人差があります。

 

 「老化」とは一般的に、成熟期以降に起こる生理機能の衰退を意味し、遺伝的な要因や外界からのストレスに対し、適応力が低下することで起こる変化と考えられます。

 

老化のメカニズムには、大きく2つの説があります。

 

生物学的に見て「老化に太刀打ちすることは難しい」とするプログラム説
成熟後における有害遺伝子の発現によって老化していくという擦り切れ説
です。

 

 時の流れるスピードはすべてのヒトに共通のものであり、同じ日に生まれた人は同じスピードで暦年齢を重ねていきますが、成長のスピードに個人差があるのと同様に、老化のスピードにも個人差があります。また、体の中の組織や細胞によってもそのスピードが変わってきます。一部の組織の老化が進んでも、他の組織は実年齢よりも若い、ということもあり得るのです。

 

老化の原因

 

 老化の原因の1つは、「活性酸素によって起こる体の錆び」と考えられています。活性酸素は、身体の様々な部分を錆びさせる原因の一つですが、活性酸素が体内にできる原因も様々あり、呼吸をした際に吸い込む酸素の一部が活性酸素となってしまったり、車の排気ガス、たばこ、紫外線、激しい運動や心理的ストレスなども、活性酸素の蓄積を誘発し、老化の原因になります。

 

 また、老化のスピードは40歳代より加速するとされています。その理由は、40歳代になると活性酸素を取り除いてきた「抗酸化酵素」の能力が急速に減少してしまうから、と考えられています1)。

 

 これらのことから、逆に老化を抑制するためには代謝を抑え、活性酸素の蓄積を抑制することが有効であると考えられるようになり、カロリー制限の効果を訴える説が唱えられるようになりました。

 

 一方で、老化には活性酸素のみならず、様々な要因が複雑に絡み合っていることから、一概に「老化を確実に抑え込むこと」はできないという考え方もあります。

 

老化はいつから始まるか

 

 老化とはいつから始まるのでしょうか。個々の細胞のレベルで見てみると老化は生まれた直後から始まるとも言えます。ヒトの胎児から採取した細胞に対する研究で、胎児から採取した細胞はおよそ50回の分裂が限界であることが分かりました。そして限界まで分裂した細胞を老化細胞と呼びます。

 

 老化細胞では、増殖能力がもとに戻れないように制御されており、老化細胞に増殖を促す処理を施しても、再度増殖が始まることはありません。若い頃は機能の低下した細胞は取り除かれ、新しい細胞が補充されることで、組織としての機能を保ち、老化を防ぐことができます。しかし、年齢と共に細胞が入れ替わるスピードは遅くなり、取り替えること自体ができなくなると、組織の機能が低下し、徐々に老化が進行していきます。やがて、細胞分裂の限界にまで達した細胞で生きていかなければならなくなります。

 

 一方、極めて稀ですが特定の遺伝子に生まれつき異常があることにより、正常な人よりも早いスピードで老化してしまうような病気もあります。これを早老症といい、国の難病にも指定されています。

 

老化による身体への影響

 

老化現象の種類や始まる年齢は、個人差があり様々です。老化は、体に様々な影響を引き起こします。いくつかの例をあげてみます。

 

脳神経系
 大脳萎縮や脳細胞の減少、神経伝達物質の活性低下などから、認知機能の低下が見られます。そのため、70歳以上の約1割、90歳以上になると5割が、認知機能低下に伴う認知症になります。

 

心血管系
 左室の肥大や冠動脈硬化、運動時の最大心拍出量が低下します。これによって心筋梗塞や心肥大、心不全、高血圧を引き起こします。

 

呼吸器系
 肺胞そのものの数の減少、肺の弾性力の低下などにより、呼吸機能が全般的に低下します。

 

消化器系
 咀嚼や嚥下能力の低下による誤嚥性肺炎、消化管運動が低下することによる便秘や便通の異常、胃内容物の食道への逆流による逆流性食道炎などが見られます。

 

腎泌尿器系
 糸球体の喪失や腎血流量の低下、ろ過率の低下により夜間尿量が増え、尿失禁を引き起こします。

 

骨格系
 骨量や骨密度の低下による骨粗鬆症や骨折、関節液減少や滑膜の弾力低下による関節炎を引き起こし、寝たきりとなる方も少なくありません1)。

 

 このほかにも、視力の低下や聴力の低下など、高齢者には様々な身体の影響が出てくるのです。

 

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