脳出血とは

脳出血とは、頭蓋内の出血病態の総称であり、一般には脳溢血として広く知られている。脳出血は脳内への出血と脳周囲への出血に分類される。医学的には狭義での脳内出血のみを指すことがある。

 

皮質下出血
致死的となることは少ないが部位により巣症状(高次脳機能障害)を生じる。高齢者に多い。

 

大脳基底核と視床の出血
中大脳動脈の穿通枝からの出血で、頻度としては最も多い。全体の70%を占め、うち被殻からが40%、視床からが30%である。この2ヶ所からの出血が多いのは、中大脳動脈という太い動脈から急激に細い動脈に変化するからである。

 

被殻出血
レンズ核線条体動脈外側枝から出血する。血腫が大きいと内包の障害により対側の片麻痺が生ずるほか、優位半球からの出血なら失語症、非優位半球なら失行・失認を認める。意識レベルが傾眠(JCS10)から半昏睡(JCS100)で血腫量が31ml以上の症例で手術適応がある。開頭術のほかに、定位血腫吸引除去術、内視鏡下血腫除去術が止血されている血腫で、しかも意識レベルが傾眠(JCS10)から昏迷(JCS30)の症例で考慮される。止血されているかは造影CTや6時間後のフォローアップCTにて判断するのが一般的である。

 

視床出血
後視床穿通動脈および視床膝状体動脈から出血する。麻痺よりも感覚障害が強く発現し、痛みを強く感じる。間脳や脳幹の障害により意識障害が起こる。脳実質内血腫に対しての外科的手術の適応はなく、急性水頭症を起こしている場合は脳室ドレナージ、脳室内血腫に対して神経内視鏡を用いた血腫除去術が考慮される。

 

脳幹出血
急速に昏睡状態となり、四肢麻痺、縮瞳などが見られる。短期間で死に至り非常に予後が悪い。手術の無効性が確認されているため手術適応はない。出血量が多いと電撃性卒中と言われ、発作と同時に死に至ることもある[1]。

 

小脳出血
小脳が障害されるため、四肢麻痺が起こらずに歩行不能などの症状が発生する。そのほかに頭痛・悪心・嘔吐・眩暈などが見られる。重症型では閉塞性水頭症により短期間で昏睡状態に陥る。血腫の最大径が3cm以上で進行性のもの、脳幹を圧迫し水頭症を合併しているものは手術適応がある。血腫量で言うと11mlあたりと考えられている。

 

脳室内出血
成人の脳室内出血は脳血管の異常によることが多いため、脳血管造影などで出血源の精査を行う。急性水頭症を起こしている場合は脳室ドレナージを考慮する。

 

多発限局性出血
脳挫傷を伴う頭部外傷後などに遅発的に起きる。

 

破裂動脈瘤由来
破裂動脈瘤の30%ほどで併発すると言われている。脳動脈瘤の好発部位としては前交通動脈(Acom)、中大脳動脈の最初の分枝部、内頚動脈-後交通動脈(IC-PC)とされている。前交通動脈瘤では前頭葉下内側および透明中隔に、IC-PCでは側頭葉に、中大脳動脈瘤では外包および側頭葉、前大脳動脈遠位部動脈瘤では脳梁から帯状回に脳内血腫を形成する。高血圧由来のものとは明らかに分布が異なるほか、原則として近傍にクモ膜下出血を伴っている。亜急性細菌性心内膜炎や絨毛がんなどでは動脈瘤を合併し、クモ膜下出血を併発することが知られている。

 

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