新型コロナウイルスの怖さは「3つの顔」にある 「負のスパイラルを断ち切ろう」と呼びかけ 日本赤十字社

2020年04月25日

 

 日本赤十字社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には「3つの顔」があり、「これらが"負のスパイラル"としてつながることで、さらなる感染の拡大につながっています」と指摘した冊子の公開を開始した。

 日本赤十字社は、「このウイルスとの戦いは、長期戦になるかもしれません。それぞれの立場でできることを行い、みんなが1つになって負のスパイラルを断ち切りましょう」と呼びかけている。

 

病気が不安を呼び、さらなる拡散につながる

 この冊子「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!〜負のスパイラルを断ち切るために〜」を発行したのは、日本赤十字社新型コロナウイルス感染症対策本部。
 この「感染症」の怖さは、病気が不安を呼び、不安が差別を生み、差別がさらなる病気の拡散につながることだとしている。
 ウイルスは目に見えず、ワクチンや治療薬もまだ開発されておらず、分からないことが多い。そのため「私たちは強い不安や恐れを感じ、ふりまわされてしまうことがあります。それらは私たちの心の中でふくらみ、気づく力・聴く力・自分を支える力を弱め、瞬く間に人から人へ伝染していきます」と指摘している。
 不安や恐れが「ウイルス感染にかかわる人や対象を日常生活から遠ざけたり、差別するなど、人と人との信頼関係や社会のつながりが壊されてしまいます」としている。

 

新型コロナウイルスの「3つの顔」とは

 第1の感染症は「病気そのもの」。感染者との接触でうつるこのウイルスに感染すると、感染者のおよそ8割は軽症だが、残りの2割は重症化するおそれがある。重症化して肺炎を引き起こす例も少なくない。
 第2の感染症は「不安と恐れ」。強い不安や恐れが心の中で膨らむと、「気付く力」「聴く力」「自分を支える力」を弱め、またたく間に人から人へ伝染していく。
 第3の感染症は「嫌悪・偏見・差別」。人間の生き延びようとする本能によりウイルス感染に関わる人を遠ざける、その結果、差別を受けるのが怖くて熱や咳があっても受診をためらうなど、結果として病気の拡散をまねくことになる。
 なぜ「嫌悪・偏見・差別」が生まれるのかというと、(1)見えない敵(ウイルス)への不安から、(2)特定の対象を見える敵と見なして嫌悪の対象とし、(3)嫌悪の対象を偏見・差別して遠ざけることで、束の間の安心感が得ようとするからだ。

 

負のスパイラルを防ぐために何が必要か

 では、負のスパイラルを防ぐために、どうすれば良いのか。
 まず、第1の感染症を防ぐためには、1人1人が「手洗い」「咳エチケット」「人混みを避ける」といった衛生行動を徹底することが重要。ウイルスに立ち向かうための行動を、自分のためだけではなく周りの人のためにもすることが大切だ。
 第2の感染症にふりまわされないためには、「気付く力」「聴く力」「自分を支える力」を高めることが重要。不安や恐れは身を守るために必要な感情だが、私たちから力を奪い、冷静な対応ができなくなることもある。
 「ウイルスに関する悪い情報ばかりに目が向けないようにする」「いつもの生活習慣やペースを保つ」「今自分ができていることを認める」「今の状況だからこそできることに取り組んでみる」「ウイルスに関する情報にさらされるのを制限し、距離を置く時間を作る」といった取組みが役立つ。
 第3の感染症を防ぐためには、「確かな情報」と広め、差別的な言動に同調しないことが必要。高齢者や治療を受けている人とその家族、医療従事者など、感染を拡大させないように対応しているすべての人に「ねぎらい」と「敬意」をはらうことが重要だ。
 「それぞれの立場でできることを行いながら、1つになって負のスパイラルを断ち切りましょう」と、日本赤十字社は呼びかけている。

 

 

 

 

 

トップへ戻る