白内障

公益社団法人 日本眼科医会のホームページから抜粋

 

 

1.はじめに

 

白内障は、年齢と共に、どなたにでも発症する病気です。また白内障の手術は、日本で年間に150万件が行われており、すべての外科手術の中で最も多く行われている、いわば身近な手術となっています。

 

白内障の手術は年々進化し、とても安全で結果の良い手術になっています。白内障手術では、ほぼ全例で眼内レンズが使用されます。数年前までは、眼内レンズにはそれ程種類はなく、どの眼内レンズを選択すればよいのか、あまり考える必要はありませんでした。

 

近年、いろいろな種類の眼内レンズが利用可能になりました。単焦点眼内レンズに加えて、多焦点眼内レンズ乱視矯正眼内レンズなどです。どの種類のレンズを選ぶか、そして単焦点眼内レンズならどこにピントを合わせるのか、多焦点眼内レンズの場合は近距離のピントがどこに合うようにレンズを選ぶのか、患者さんご自分で決めて頂かなくてはいけません。そのためには、眼内レンズの種類とそれぞれの特徴について良く知って頂く必要があります。

 

本冊子によって、白内障手術と眼内レンズの選択についての理解を深めて頂ければ幸いです。

 

2.白内障とは?

 

目の中には水晶体といって、カメラのレンズに相当する部分があります。正常な水晶体は透明で、外から目の中に入ってきた光を屈折し、網膜にピントを合わせる役割をもっています。
この水晶体が濁ってきてしまい、透明ではなくなった状態を白内障といいます。
年齢(加齢)が原因であることがほとんどですが、他にステロイド薬など薬によるものや、アトピー性皮膚炎に伴うもの、目の病気に併発するものなどもあります。

白内障の症状は、目がぼやける、かすむというものが代表的ですが、他にも明るいところでまぶしい、メガネの度数が合わない、細かいものが見えない、ものがだぶって見える、などの症状が出ることもあります。白内障かどうかは、ご本人の自覚症状からだけでは判断できません。他の病気が隠れていることもあります。見え方がおかしいなと感じたら、一度眼科を受診して、しっかりと検査をしてもらって下さい。

 

3.いつ手術を受けたらいいの?

 

白内障は薬では治りません。進行した白内障を治療する方法は、手術しかありません。では、いつ手術を受けたらよいのでしょうか。

白内障は手遅れになる病気ではないので、急いで手術を受ける必要はありません。視力がいくつまで低下したから手術を受けなければいけない、ということもありません。
ご本人が生活上、不便を感じるようになったときが、手術を受ける時期になります。これは、お一人お一人の生活パターンによって異なってきます。細かいものを見ることが多い方や、車を運転する機会が多い方は、早めに手術を受けられるとよいでしょう。逆に、部屋の中で過ごすことが多く、あまり細かい字などを読んだりすることがない方は、手術を急ぐ必要はありません。
検査したときの視力結果が良くても、実は屋外ではまぶしくて見づらいとか、ものがだぶってしまい生活に支障がある、といったこともあります。たとえ視力が良くても何らかの不自由を感じておられるのなら、眼科で相談してください。

 

4.眼内レンズの働き

 

水晶体は網膜にピントを合わせる役割を持っていますので、手術で水晶体を取り除いてしまうと、そのままではピントが合わなくなってしまいます。昔は、手術の後に分厚いメガネやコンタクトレンズを使うことによって、ピントを合わせていました。しかし、分厚いメガネやコンタクトレンズは不便なので、最近はその代わりに眼内レンズが使われています。
白内障手術では、水晶体の中身だけを取り除き、周りのカプセル状の膜(水晶体嚢のうといいます)を残します。このカプセルの中に眼内レンズを入れて、固定します。

 

 

5.眼内レンズに寿命はあるのですか?

 

眼内レンズはいつまでもつのですか、と聞かれることが時にありますが、よほどのことがない限り、いったん目の中に入れた眼内レンズを取り出したり入れ換えたりすることはありません。先天白内障の小さいお子さんに手術をするときにも、眼内レンズは適応として認められています。眼内レンズの寿命は人間の寿命より長いと考えられています。
眼内レンズを取り出すのは、度数が合わなかったとき、見え方がどうしても合わないとき、眼内レンズの位置がズレてしまったときなどですが、こういったケースは非常に稀です。

 

6.眼内レンズの素材

 

素材として、硬いものと柔らかいものの2 種類があります。硬いものはPMMA と呼ばれるアクリル樹脂で、柔らかいものにはアクリル系とシリコーン系の2 種類があります。
現在最もよく使われているのは、柔らかいアクリル系の素材からできた眼内レンズです。眼内レンズの直径は6mm ですが、柔らかい素材であるために折り畳んで目の中に挿入することができるので、1.8 〜 2.8mm の傷口で手術を行うことができます。傷口が小さい方が、目に対して優しい手術になります。

 

7.単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ

 

眼内レンズは機能の面から、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズに大きく分かれます。
若いときの人間の目は、水晶体の厚さや形を変化させることによって、遠くから近くまでピントを合わせることができます。老眼になると、ピントを合わせる能力が衰えてきて、ピントを合わせづらくなり、最終的には一つの距離にしかピントが合わなくなります。
眼内レンズは、若い目の水晶体のように、目の中で厚さや形を変えることができません。ですので、白内障手術で水晶体を単焦点眼内レンズに取り替えると、老眼の状態と同じように、一つの距離にしかピントが合わなくなります。

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