会計ソフトとAIの活用
<アスピックURL抜粋>
AI-OCR導入による領収書等の読み取り自動化
AIによる自動仕訳
AI活用による監査・決算チェックの効率化・正確性
AI搭載チャットボットによる会計ソフトの使い方サポート
本来、経理業務には専門的知識の必要性や、勘定科目などの専門用語の存在だけでなく、領収書・金額入力、仕訳、監査といった定型的な業務も多い、という性質があります。
専門知識を取得しない限りは誰にでもすぐできる業務ではなく、逆にいえば専門知識さえあればどの企業に行っても即戦力になりうる、という側面があります。
その専門知識、定型業務の部分をAI化しシステムに組み込むことで、様々な業務を自動化できます。よって、会計ソフトはAIが活用される余地が大きく、AI化しやすい分野と言えます。
領収書等の読み取り自動化
AI-OCR機能を利用して、領収書等の紙の情報を読み取りデータ化し、自動で会計ソフトに取り込むことができます。この流れの中の「正確に読み取る」という部分でAIが使われます。
入力の手間が減って業務効率化。
目視や手入力時の人的ミスが減る。
AI-OCRは、一般的なOCR(Optical Character Recognition/Reader、画像の文字認識)と違い、その名の通りAIを搭載したOCRです。一般的なOCRでは定型フォームに印字された文字の読み取りは可能ですが、非定型レイアウトや、定型であっても手書き(領収書の宛名欄など)は正確に読み取れず、実用レベルではありません。
しかしAI-OCRでは非定型レイアウトや手書きの読み取りが可能です。また、もし読み取り内容に間違いがあっても、後で人が修正したら、その修正内容を機械学習データとして蓄積し、文字認識精度の継続的な向上にもつながります。自然言語解析技術により、読み取り後に前後の文字列から正しい文字(例えば、カタカナの「エ」なのか、漢字の「工」なのか)を判断します。
このAI-OCRの具体的な使われ方としては、レシート、領収書の内容を読み取ってデータ化し自動的に伝票入力、という機能です(実は会計ソフトのレシート読み取り機能は、AI-OCRだけの特別な機能でなく、精度はともかく普通のOCRや、またスキャン画像を人が見て入力代行など、手段を問わずに増えてきています)。
文字認識が難しい場合は、レシート内の数字「金額」、「日付」、「電話番号」だけを読み取り、電話番号から会社名や店舗名を判別して伝票の摘要欄に表示、という例もあります。
レシート読み取りだけでなく、各種帳票(請求書、発注書、見積書、決算書、通帳等の会計書類)の画像解析をして必要なデータのみを抽出し、さまざまなシステムの入力フォーマットに合わせたデータ出力などにも使われています。例えば複数のファイルから読み取り、1シートのCSVにまとめて出力するなども可能で、その後に他システムと連携する場合にも便利です。
最後に、AI-OCRの精度(正確性)について言及しておく必要があります。イベントで実演し、読み取り技術の正確性を披露する場などもあり、一般的なOCRと比べて精度も上がり、読み取りの幅も広がっているのは間違いありませんが、技術としてもちろん完璧ではない、ということを頭に入れておくことをお勧めします。クラウドワーカーとAIとで、人の目で最終チェックをすることを売りにしているサービスもあるくらいです。
AIによる自動仕訳
連携した銀行、クレジットカード、ICカード、POSなどの明細データを取り込むだけでなく、内容を判別して勘定科目を提案、自動仕訳します。伝票入力や消込の作業が自動化します。ただ紐付けるだけでなく、「取り込みデータから内容を判別する」という点でAIが使われます。
自動化によるメリットは、前述のAI-OCR同様、「一つ一つ入力する手間が減り業務効率化」、「手作業による人的ミスが減る」の二つに加え、「勘定科目を提案してくれる」という点が挙げられます。
具体的な使い方としては、読み取った文字が「駅」だった場合に、勘定科目に「旅費交通費」を提案してくれます。また、連携したクレジットカードの明細を取り込み、その中から内容を判別して経費分だけ抽出して仕訳する、といった例や、口座明細を取り込んで入金伝票の自動起票、といった使い方もあります。
中にデータから判別するだけでなく、前述のAI-OCR機能と合わせて、紙の撮影データを画像解析して文字や金額を読み取り、その文字から自動仕訳、という例もあります。
クラウドに蓄積されたビッグデータから最適な仕訳を予測し、使えば使うだけ学習し精度が上がっていくのもAIならではです。学習した仕訳パターンが複数ある場合には、仕訳作成時に仕訳辞書画面が表示され、精度の向上に役立ちます。
AI活用による監査・決算チェックの自動化
月次監査や決算等の際のチェックをAIにより自動化し、監査時間の短縮、正確性の向上につなげるだけでなく、不正やミスを防止する仕組みです。この流れの中で「チェックする」という点でAIが使われます。メリットは次の2点です。
監査時間が短縮され、即時性があるため、リアルタイムで正確な分析でき、経営改善に繋がる。
ミスを防ぐだけでなく、不正検知などの内部統制において有効
具体的には、月次監査で過去との変動率が大きい等の異変に基づき、修正の必要がありそうな仕訳を自動で探してアラートとして表示することや、決算時のエラーチェックなどです。
請求書データを自動で読み取り、機械学習によりその中から不正や不具合の可能性があるデータを抽出し、それらについて人が確認するよう促す機能もあります。仕訳データを対象に、機械学習で一定の法則性を読み取り、個々の仕訳がそれに合致するかどうかを評価することで異常な仕訳を抽出します。
AI搭載チャットボットによる会計ソフトの使い方サポート
会計ソフトの操作について、AI搭載チャットボットに話し言葉で入力された質問文を理解し回答する、対話型のサポートです。「話し言葉でも理解する」という点でAIが使われます。メリットは次の2点が挙げられます。
24時間365日いつでも質問できるため、業務のスピードアップにつながる
経理担当者が会計ソフトの操作方法についてユーザーから質問されることが減り、楽になる
定型の対応となる通常のチャットボットと異なり、AI搭載チャットボットは話し言葉や変化のある言い回しを理解し、曖昧な質問の場合は聞き返して対応します。質問候補を表示して選択肢を設けることもあり、基本的には一問一答で答えられるような質疑応答になります。文面だけでなく、関連するPDFや動画のリンク先を回答してくれることもあります。
AIの回答内容に満足が行かない場合はサポートデスクのオペレーターに繋がるという仕組みもあります。もちろんAIで学習するタイプは、使えば使うだけ精度があがります。
まとめ
領収書等の読み取りや仕訳においては、特に定型化されやすい業務であることもあり、AIによる自動化がすでに進んでおり、今後も真っ先に活用が広がりそうです。会計ソフトの使い方サポートもAIを適用しやすい業務です。
監査や決算のチェックにおいては、決算処理を進めていく中での仕訳ミスの防止には活用が進みそうです。監査チェックのAI自動化は監査法人が取り組みを始めているように、企業側で使うよりも監査法人側で業務負担軽減のための利用することの方が先に進みそうです。