今月のニュースから

7月04日(木)特別養護老人ホーム受動喫煙、20歳未満に配慮を - 厚生労働省、ガイドライン策定で通知
 厚生労働省は、受動喫煙防止のガイドラインを策定し、その周知を求める通知を医療関係団体に出した。ガイドラインでは、健康増進法の適用除外の場所となっている職員寮や特別養護老人ホーム・有料老人ホームの個室についても「望まない受動喫煙を防止するため、20歳未満の者が喫煙可能な場所に立ち入らないよう措置を講じる」としている。
 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法に基づき、▽病院▽診療所▽助産所▽薬局▽介護老人保健施設▽介護医療院―などの施設では、7月から屋内が完全禁煙となった。
 ガイドラインでは、労働者の健康管理に関して、「事業者は、事業場における受動喫煙防止対策の状況を衛生委員会等における調査審議事項とする」と明記。産業医の職場巡視に当たっても「受動喫煙防止対策の実施状況に留意する」としている。
 また、妊娠していたり、呼吸器・循環器などの疾患を持っていたりする労働者を含む「受動喫煙による健康への影響を一層受けやすい懸念がある者」に対しても、受動喫煙を防止するため「特に配慮を行う」としている。   (医療介護CBニュース)

 

7月05日(金)特別養護老人ホーム新卒採用、前年度比0.1人減 - 福祉医療機構が社会福祉法人経営動向調査を公表
 福祉医療機構は、社会福祉法人経営動向調査の概要を公表した。特別養護老人ホームが2019年度に採用した新卒者の平均人数は1.0人で、前年度と比べて0.1人減少した。
 調査は6月3日から19日まで、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人を対象に行われ、521法人から回答を得た。法人が19年度に採用した新卒者の平均人数は、前年度比0.3人減の3.2人だった。
 採用状況の課題(自由記述)も取り上げており、志望者・求職者の減少に関しては、「ハローワークや求人雑誌からの応募がほぼなくなった」「介護職のイメージが悪い。必然的に求める人材でなくても採用せざるをえない」といったことを挙げている。
 人材確保に係るコストに関しては、「人材紹介会社からの紹介が増えて、紹介料の負担が大きくなっている」「人材派遣、紹介会社頼みであるが、未経験者も多く育成に時間を要して派遣終了になる」などの記述があったという。   (医療介護CBニュース)

 

7月05日(金)介護保険どうなる? 市民団体のQ&A集会で厚労省・財務省が直接回答
来年の介護保険法改正に向けた議論が進んでいる。厚生労働省は論点に介護予防・健康づくりの推進、保険者機能の強化、持続可能な制度の再構築などを挙げる。財務省も軽度者(要介護1、2)の生活援助サービスの市町村事業への移行、ケアマネジメントの利用者負担の導入などを提唱している。参院選が目前に迫る中、介護保険は今後どうなるのか。市民福祉情報オフィス・ハスカップなど市民団体が6月4日、都内で開いた集会に、厚労、財務両省の職員が出席して質問に答えた。
【財務省の回答】
 ・要介護1、2を「軽度者」と定義する根拠は?
 社会保障審議会介護保険部会の報告書などから「中重度は要介護3以上」と読みとれ、それと対比して表現している。
 ・軽度者の生活援助サービスを市町村事業に移す必要はあるのか?
 財源は従来の介護給付と変わらない。介護給付では専門職によるサービスが基本だが、それに限らず多様な主体が利用者ニーズに応じて柔軟なサービスを提供できるようになる。
 ・利用者負担引き上げが必要な理由は?
 制度創設当初より介護費用は3倍増の11兆円、1号保険料は2倍増の5869円となった。厳しい介護保険財政の中で世代間、世代内の公平性を担保することが重要。能力に応じた負担のあり方も大事。
 ・ケアマネジメントに利用者負担を求める理由は?
 現行では負担がないため、利用者側からケアマネジメントに対するチェックが働きにくい。
【厚労省の回答】
・介護予防・健康づくりの推進が高齢者への過度な推奨にならないか?
 介護予防として「通いの場」の充実を進めているが、住民自らの活動を支援しており、本人の希望や意向に沿った取り組みが行われるようにしている。
 ・ケアマネジメントの利用者負担化は検討するのか?
 賛成派は利用者や家族に専門的業務であるケアマネジメントへのコスト意識をもってもらうために必要、反対派はサービスの利用抑制につながる危険性がある、との意見がある。これらを踏まえ検討する。
 ・多様な介護ニーズがある中でケアマネジメント手法の標準化は必要か?
 機械的な標準化を目的としたものではない。利用者の個別の事情を考慮すべき面と、利用者が誰であっても同様の対応をすべき面をみることが重要で、引き続き検討に努める。
 ・昨年10月から訪問介護の生活援助サービスの利用回数が多いケアプランを検証しているが、これまでの検証件数は?
 確立したデータではないが、回答のあった1043市町村で2921件あった。市町村がどのような助言をしたか、今年度に調査する予定。
 ・市町村が保険者機能強化推進交付金(得点に応じて交付金が出る)の得点を優先し、適切な要介護認定を行わないことを防ぐには?
 通知のもと各介護認定審査会で判断している。審査会業務に精通した人を派遣して技術的助言もしており、引き続き推進していく。
 ・認知症の人の悉皆調査を行う予定は?
 現時点ではない。
 ・介護人材確保には介護報酬の引き上げが必要では?
 介護報酬では介護事業者の経営状況などを踏まえ、介護が必要な人に必要なサービスが提供されるよう対応してきた。10月からベテラン介護職員に重点化を図りつつ更なる処遇改善を図る予定で、引き続き検討していく。
【意見交換】
◆福祉ジャーナリストの浅川澄一氏
 介護予防・日常生活支援総合事業は、従来の介護事業者が単価を下げて行っているサービスが大半で、住民主体によるサービスは限られている。多様な主体が参入しているとは言えず、事業としては大失敗だ。
 国は認知症の人の絶対数を一度も調べたことがない。要介護認定のデータから簡単に把握できるはずなのに。
◆淑徳大教授の鏡諭氏
 相変わらず介護保険の議論は財政論だと感じた。現場の声がなかなか届かない制度になってしまった。本来は制度の中で要介護者や家族が安心して暮らせるか、サービスが十分かを議論すべき。負担の議論は最後だ。
 毎日のように介護殺人や虐待が発生しているのは介護給付が十分でない表れではないか。
◆服部メディカル研究所の服部万里子氏
 ケアマネジャーへの相談に費用がかかれば、相談に行かなくなり、重度化してしまう。利用者によるチェックは、ケアマネジャーの質の向上に関係ない。利用者負担に2割、3割が導入されて介護の質が上がっていないことからも明白だ。
◆NPO法人暮らしネット・えん代表理事の小島美里
 利用者負担の原則2割化、要介護2までの生活援助サービスの市町村事業化、ケアプランの有償化が進められたら、制度は持続しても利用者の生活は続かない。厚労省の改正の論点には、独居や認知症、老老介護など高齢者が不安と思っていることを支えるものが何も入っていない。   (福祉新聞)

 

7月07日(日)「認知症」新大綱、現場では 高まる「予防」の意識 社会保障費抑制にジレンマ
 認知症対策を進める政府の新たな大綱が決まった。令和7(2025)年に認知症の高齢者が約700万人に達すると推計される中、患者が暮らしやすい社会を作る「共生」に加えて、発症や進行を遅らせる「予防」に初めて重点が置かれた。患者にも、そのケアに当たる立場にも、いつ自分が当事者になるかもしれない今、それぞれの現場を探った。
 認知症に対する有効な治療法が確立されていない中、「予防」への患者側の違和感は根強い。高齢者の健康を保ち、認知症の発症を抑制したい政府の意向の裏側には、患者の増加とともに膨らむ社会保障費を座視できないとのジレンマが色濃くにじむ。
 ■運動と頭使って
 「足踏みをしながら、数字を交互に言っていきましょう」
 平日の昼下がり、スポーツクラブなどを運営する「横浜YMCA」(横浜市)が開催する認知症予防の教室で、指導員の軽快な声が響く。
 参加者は60代〜80代の女性9人。2人組で椅子に座って向かい合い、「1」から順番に数字を声に出していく。「やめ」の合図で、今度は最後の数字から「3」を引いていき、引けない数になれば終了だ。
 「運動と頭を使う課題を同時にこなすことは脳の活性化に役立つ」と指導員の溝部文子さん(34)。約1時間のプログラムを終えた大長布子(だいちょう・のぶこ)さん(78)は「体や頭を動かすとスッキリする。物忘れも少なくなってきた」と笑顔を見せた。
 ■健康寿命の延伸
 健康上の支障なく生活できる「健康寿命」(平成28年)は男性72・14歳、女性74・79歳。健康寿命の延伸は、多くの高齢者が目指す課題だ。厚生労働省が40歳以上の男女3千人に行った意識調査(同年)では「健康寿命を延ばすために重要なこと」(複数回答)として、約6割が「適度に運動をすること」と回答した。
 世界保健機関(WHO)は今年5月に公表した認知症予防の指針で、定期的な「運動」や「禁煙」などを推奨。運動や社会的活動などが認知機能の低下予防につながるとの見方は、国内外で広まりつつある。
 治療法が明確でないにもかかわらず、政府が大綱の柱に予防を据えた背景には、膨らみ続ける社会保障費への危機感がある。
 認知症患者が右肩上がりで増えるのに伴い、医療費・介護費などの社会的コストは令和2(2020)年に17・4兆円、7年に19・4兆円、12年に21・4兆円と増大していくとの試算もある。
 ■家族らに懸念も
 ただ、認知症の患者や家族には「予防が強調されれば、『認知症になったらおしまい』といった偏見が広がる」「認知症の人たちへの理解が薄らぐことにつながらないか」との懸念が渦巻く。
 政府はこうしたことを踏まえ、大綱の2本の柱を素案段階と入れ替えて「共生」「予防」の順とした。厚労省の担当者は「予防のためには共生の社会づくりが大前提。大綱が予防だけをことさら強調して取り組むものではないことを明確にした」と強調している。   (産経新聞)

 

7月10日(水)高齢者虐待対策は「喫緊の課題」 - 18年版厚生労働白書
 厚生労働省が9日に公表した2018年版の厚生労働白書。介護分野の年次行政報告では、増加する高齢者虐待への対応や介護事業所によるICT活用を全国的に促進するための取り組みなどを取り上げている。
 厚労省の調査で発覚している高齢者の虐待件数は年々増加傾向にあり、17年度には過去最高の1万7588件に上った。白書では、市町村などの体制整備の強化を「喫緊の課題」と説明。18年3月に市町村などの職員を対象とした高齢者虐待への対応と家族などの養護者支援に関するマニュアルを改訂したことを取り上げている。改訂時には、ストレス・マネジメントについての内容などを盛り込んだ。
 ICT化の普及については、介護ロボットと別立てで紹介。ICT化を全国的に普及促進するために、「有識者等による既存ソフトの機能やセキュリティ等の分析を行い、今後求められるソフトのあり方を検討するなど、標準仕様の作成に向けた取り組みを進めていく」と明記している。厚労省は16年度から介護事業所間の情報連携に関する調査研究を委託事業で進めており、居宅介護支援事業所や訪問介護事業所などの間でケアプランのデータ連携を行うための「標準仕様」を作成していた。老健局が5月に都道府県に対して積極的な活用の推進を求める通知を出している。   (医療介護CBニュース)

 

7月14日(日)誤嚥を防ぐとろみ付き飲料自販機、介護施設向けも展開へ
筋力の衰えなどから、食道に送られるはずの飲食物が気管などに入り込んでしまう「嚥下(えんげ)障害」。死につながる可能性もあるこの障害の対処法の一つとして、飲み物に“とろみ”を付ける方法がある。自動販売機運営管理会社のアペックス(愛知県大府市)は飲料に「とろみ」を加える機能が付いた紙コップ式自動販売機を開発。全国約50カ所に設置を予定しており、10月には施設向けの大型サーバーも展開する予定だ。
 現在展開している自販機にはコーヒーや緑茶、抹茶ラテなど多種の味があり、温冷にも対応している。
 自販機の「とろみありボタン」を押すと、とろみを「薄い」「中間」「濃い」と選ぶことができる。とろみを付けないこともでき、どちらでも飲み物の値段は同じだ。
 飲料にとろみを付けてみても味は 変わらないが、しっかりと飲み物がのどを通る感覚が分かる。
 コーヒーでも抹茶ラテでも、温かくても冷たくても、3段階のとろみは均一にしている。たとえば、コーヒーではミルクや砂糖の有無によって、とろみ剤の調整の仕方をそれぞれ変えている。
 介護施設などでは、手作業でとろみを付ける作業を行っているケースが多い。
 「飲み物の種類によってとろみ剤の溶ける具合が相当異なる。違いに合わせて(手作業で)きっちりとろみを付けるのは難しい」と日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニックの菊谷武院長は説明する。
 そのため、介護施設などによっては利用者の飲み物の要望に対応できないほか、利用者全員分の3回の食事と、おやつに付く飲料にとろみをつけるために、職員が1日8時間ほどかけることもあるという。
 アペックスでは10月、施設などで使用できる2リットルの大型サーバーも展開する予定。こちらも要望に合わせて8種類の飲料を準備することができる。
 アペックスの担当者は「災害時でも避難所などにとろみ付き飲料があれば、嚥下障害を持つ高齢者も安心できる」と話し、災害時の活用方法も検討していくとしている。
 ■飲み込む意識と筋力向上で予防
 嚥下障害のため、気管に飲食物などが入ってしまうことをきっかけに発症する誤嚥性肺炎。厚生労働省の平成30年人口動態統計月報年計によると、誤嚥性肺炎の死因順位は7位となっている。
 東京都健康安全研究センターによると、昭和54年には423人ほどだった誤嚥性肺炎による死者数は平成28年には3万8650人にまで増加。2030年には12万9000人程度にまで急上昇すると予測している。日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニックの菊谷武院長は「とろみ剤など対応策は普及しているが、それを追い越すほどに高齢者が増えている」とする。
 誤嚥性肺炎の起因となる嚥下障害について、菊谷院長は原因として、気管に蓋をして飲食物の侵入を防ぐ喉頭蓋の「気管に蓋をするタイミングのズレ」「蓋をするための筋力の低下」の2つを挙げる。
 タイミングが合わない場合は「意識して飲み込むことが大切」という。また、上手に飲み込むためには、まず歯できちんと食べ物をかみ砕く必要があるため、歯を磨き大切にすることが第一歩となる。
 筋力が低下している場合は口を最大限に開き、その状態を10秒保持する運動などによって嚥下機能を鍛えることができる。
 菊谷院長は「筋力は30歳をピークに1年で1%低下するといわれている。つまり70歳だと40%も低下していることになる。嚥下機能の衰えは60歳ごろから意識した方がいいだろう」と警鐘を鳴らしている。(産経新聞)

 

7月17日(水)シャープ、介護関連事業に参入 施設の業務効率化を支援
シャープは17日、介護関連ビジネスに参入し、施設向けに高齢者の生活機能訓練システムを販売すると発表した。システムではタッチディスプレーによる「塗り絵」など20種類のゲームを活用した訓練を行うほか、訓練計画の作成や記録・管理も自動で実施。人手不足が深刻化する介護現場の業務効率化につながるという。
 システムは「頭の健康管理サービス」と名付け、8月以降に提供。まずはデイサービスを展開する全国の通所施設の約5%にあたる2800施設への販売を目指す。
 利用者ごとにゲームの成績に応じた訓練プログラムを策定するほか、ゲームの成績を記録・管理するため、施設側はこれまでスタッフに頼ってきた作業を省くことが可能になる。システムをフルセットで契約した場合、利用者30人で年約50万円となる。
 人手不足に悩む介護現場では、スタッフの業務負担が増えるとして生活機能訓練を敬遠するような動きもあるといい、シャープの担当者は「サービスを導入することで、高齢者にとって適切な生活機能訓練が実施されることも期待できる」としている。(産経新聞)

 

7月17日(水)認知症ケアの効果、「判定項目の収集が必要」 - 厚生労働省が科学的介護検討会の取りまとめ公表
厚生労働省は16日、科学的裏付けに基づく介護に係る検討会の「取りまとめ」を公表した。2020年度の本格運用を目指している「介護に関するサービス・状態等を収集するデータベース」(CHASE)の初期仕様における収集項目や将来的に対象とする項目の方向性などを記載。認知症に関しては、「認知症ケアの効果および認知症の身体的ケア効果を判定する項目の収集が必要である」としている。
 CHASE(初期仕様)の収集対象とする項目については、▽信頼性・妥当性があり科学的測定が可能▽データの収集に新たな負荷がかからない▽国際的に比較が可能―といった基準に従って優先順位を付けることにしたという。
 科学的介護の仕組みについては、「サービスの利用者やデータ入力を行う事業所等がデータの分析結果の恩恵を享受できるようフィードバックできる仕組みが必要である」と明記。フィードバックを享受する対象者として、利用者のほかに、介護者、事業所、保険者(自治体)を挙げている。
 例えば、認知症の領域における介護事業所からの収集項目に関しては、「診断からケアの実施とその評価を一連の流れとして捉える必要がある」と指摘。介護現場でケアニーズを含めた認知症の進行度を把握し、「診断や状態別に適切なケアの内容を検討し実施することが重要」としている。
 また、認知症のスクリーニングに必要な項目として、「認知症の既往歴」(新規診断を含む)、認知症のケアに活かす項目として、認知症の周辺症状に係る指標の「DBD13」をそれぞれ提示。モデル事業で、デイケアにおける家族(主たる介護者)の負担の最大要因である周辺症状の変化の測定可能性などについて「検討を行っていく必要がある」との見解を示している。   (医療介護CBニュース)

 

7月19日(金)高齢者の「通いの場」明確に=介護予防推進で骨子案−厚労省検討会
 厚生労働省は19日に開いた有識者検討会に、介護予防事業の推進に向けた中間取りまとめの骨子案を示した。
 高齢者が集まって運動や会食、喫茶、趣味を楽しむ「通いの場」について、介護予防に効果のある取り組みを全国に広めるため、類型化するなどして定義を明確にすることを提案した。
 骨子案は、市町村の担当職員に通いの場の具体的なイメージを持ってもらうため、参考となるような各地の事例を周知する方針を示した。この他、通いの場を利用した高齢者に「ポイント」を付与するなど、積極的な参加を促す仕組みについて検討する必要性も盛り込んだ。   (時事通信社)

 

7月19日(金)日慢協、「多機能型老健」認める仕組みを要望 - 武久会長、人口減少地域の既存施設活用を主張
 日本慢性期医療協会(日慢協)の武久洋三会長は18日の定例記者会見で、介護老人保健施設(老健)の「多機能型」への転換を認める制度設計を検討するよう要望する考えを示した。2018年度の介護報酬改定では、入所者の在宅復帰支援に関連する要件を満たさない老健の評価が引き下げられたが、介護施設が不足している地域では、老健が要介護度の高い入所者などの受け皿となっている実態を踏まえた。
 老健を巡っては、17年度の制度改正で「在宅復帰・在宅療養支援」施設としての役割が明確化された。18年度の介護報酬改定では在宅復帰・在宅療養支援等指標(在宅復帰率、ベッド回転率、入所前後訪問指導割合、退所前後訪問指導割合など10項目を評価)や、入所者が退所した後の在宅での生活の状況の確認などの一定要件を満たさない施設の基本報酬が引き下げられている。
 武久会長は老健の入所率について「一部では80%を下回っている施設もある」(厚生労働省の17年度の調査では平均利用率は89.7%)と述べ、会員から「運営の継続が難しい」として対応を求める意見が増えていることを明かした。
 こうした状況の中、人口が少なく介護施設など入居系のサービスが不足している地域では、要介護度が高く長期滞在が必要な住民などを単独老健が受け入れている例がある。今後人口減少が明らかな地方では施設の新設は難しいことを踏まえ、武久会長は住民の介護ニーズに応じるには「既存の施設を多様化させるしか道はない」と主張した。老健の一部を介護老人福祉施設(特養)や介護医療院、軽費老人ホーム(ケアハウス)などに分割・転換できる仕組みを想定しているという。   (医療介護CBニュース)

 

7月19日(金)訪問介護、過剰提供 「蔵前」(八戸)不正請求返還へ
利用者の同意を得ずに訪問介護サービスを過剰に提供したなどとして八戸市は19日、介護保険法に基づき、同市の介護事業者「蔵前(くらまえ)」(三浦順子代表)に対し行政処分をしたと発表した。運営する「ヘルパーステーション嬉野」と「居宅介護支援センター嬉野」の2施設について、指定居宅サービス事業者および指定事業者、指定居宅介護支援事業者の指定を取り消した。市は同社に対し、不正に受け取った介護給付金と加算金の支払いを命じた。
 同日の市議会民生協議会で報告した。市介護保険課によると、ヘルパーステーション嬉野は2017年12月〜18年11月に▽出勤簿上は勤務していない職員がサービスを提供した▽利用者が不在にも関わらずサービスを行った―などの虚偽の記録を作成し、介護給付金を不正に請求。
 居宅介護支援センター嬉野は、同ヘルパーステーションが必要な居宅サービス計画の変更を行わずに、サービスを提供していることを認識していながら、必要な対応をせずに不正請求を手助けした。
 市は18年12月と今年3月に計3回の監査を実施。処分は12日付で、8月9日から効力が発生する。
 同社は処分を受け入れ、既に利用者らへ説明中。書類の記載ミスや職員の勤務時間などついて管理不足と認識した上で、現在は外部コンサルタントによる業務確認や伝票の正確な処理を徹底するなど是正を図ったという。三浦代表は、本紙取材に「処分を真摯に受け止め、利用者の皆さんの不利益にならないようにしっかりと対応していきたい」と話している。   (デーリー東北)

 

7月24日(水)特定処遇改善加算のQ&Aで事務連絡 - 職員グループ間の配分ルール詳細など明示
 厚生労働省老健局は23日、10月に控える消費増税に伴う介護報酬改定で新設される「介護職員等特定処遇改善加算」(特定加算)に関する、Q&Aの第2弾を地方自治体や業界関係団体に事務連絡として示した。賃金改善の対象となる「経験・技能のある介護職員」「他の介護職員」「その他の職種」間の配分ルールなどについて詳細を明記している。
 事務連絡では、20項目のQ&Aを示した。特定加算の取得には、「介護福祉士の配置等要件」「現行加算要件」「職場環境等要件」「見える化要件」を満たす必要がある。このうち、加算率の高い「特定加算(I)」では介護福祉士の配置等要件(サービス提供体制強化加算などサービスごとに指定された加算の「最も上位の区分」を算定する必要がある)を含む全てを満たさなければならない。4月12 日に老健局が示した特定加算に関する「基本的考え方」では、介護福祉士の配置等要件について、「入居継続支援加算や日常生活継続支援加算を算定できない状況が常態化し、3カ月以上継続した場合には、変更の届出を行うこと」とされている。今回のQ&Aでは、変更の届け出により、4カ月目からは特定加算の算定ができなくなることと、この3カ月の猶予期間の対象には訪問介護(特定事業所加算)が含まれないことを明示した。また、介護職員等特定処遇改善計画書を届け出る時点では、介護福祉士の配置等要件を満たしていなくても特定加算の算定開始時点で満たせば算定は可能とした。
 「経験・技能のある介護職員」などのグループ間に設定されている配分方法については、介護給付のサービスと介護予防・日常生活支援総合事業や予防給付のサービスを一体的に運営している事業所の扱いを明記。同一の就業規則などが適用されている場合、同一の事業所と見なして、「月額8万円の改善又は年収440万円となるものを1人以上設定すること」「配分ルール(経験・技能のある介護職員以外のグループにも賃金改善を図る場合、グループ間の平均賃金改善額を2:1:0.5までとする)を適用すること」で特定加算の算定が可能になることも明記した。このほか、法人本部の人事や事業部で働く職員でも、特定加算の算定対象サービス事業所の業務を行っていると判断できる場合は、配分対象のグループのうち「その他の職種」に含めることができることなどを示した。   (医療介護CBニュース)

 

7月26日(金)在宅介護の計画「ケアプラン」自己負担?制度改正の柱に
 来年の通常国会での介護保険法改正に向け、在宅サービスの利用計画「ケアプラン」の作成費用に自己負担を導入するかが、主な検討課題になる見込みだ。膨らむ社会保障費の抑制が狙いだが、介護サービスの利用控えと重症化につながることへの懸念も根強い。秋から本格化する社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)での議論は難航しそうだ。
 介護保険を利用するにあたり、ケアプランは月1回作成する必要がある。本人や家族が作ることもできるが、手続きが煩雑だとして、ケアマネジャーに任せることが多い。プラン作成を含むケアマネジメント費は、要支援で月4500円、要介護で月1万〜1万3千円ほど。ケアマネジャーが勤める事業所に介護報酬として支払われており、利用者の自己負担はない。
 2018年に10・7兆円だった介護保険費用は、25年に15・3兆円、40年には25・8兆円に膨らむ見通しで、抑制が課題になっている。17年度のケアプラン作成費などは、介護費用全体の4・9%にあたる4885億円だった。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は6月、プラン作成などへの自己負担の導入を提言。負担の納得度を高めるため、プラン内容が適切かを評価する仕組みの整備も求めた。   (朝日新聞社)

 

7月29日(月)介護予防の「通いの場」 参加でポイント付与へ〈厚労省案〉
 厚生労働省は19日、「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」を開き、中間報告の骨子案を示した。介護予防を一層推進するため、活動に参加するとポイントがもらえる仕組みの普及や、保険者機能強化推進交付金で自治体の取り組みをより評価する方策の検討などを盛り込んだ。
 一般介護予防事業は、2014年の改正介護保険法で市町村の地域支援事業として創設された。主に住民が主体となって体操や茶話会などをする「通いの場」の支援をしている。
 「通いの場」はフレイル対策などとしても期待され、17年度で全国に約9万カ所(5年間で約5万カ所増)あるが、参加率が4.9%と低いことが課題だ。 
 そこで厚労省は「通いの場」をはじめとする介護予防活動への参加を促すため、ポイント付与の仕組み(例=ためたポイントを換金できる)の普及や、有償ボランティアとしての参加を拡大する方策を検討する。市町村が把握していない介護予防の活動もあるため、「通いの場」を定義し、類型化する。
 また、高齢者の保健事業と介護予防を一体的に行うよう健康保険法などが改正されたことから、保健師らの医療専門職や地域の医師会などとの連携を強化する。リハビリ専門職のかかわりも増やす。
 さらに、自治体への保険者機能強化推進交付金について、介護予防に関する指標の見直しを含めた抜本的な強化方策を検討する。また、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルに沿った介護予防の促進方策も検討する。
 厚労省は近く中間報告をまとめ、年内に詳細を詰めて報告書を取りまとめる。   (福祉新聞)

 

7月29日(月)厚労省「ヘルパーは重要な業種。しっかり対応していく」人手不足で認識
「訪問介護について厚生労働省の考えを聞きたい。これからホームヘルパーをどうやって確保していくつもりなのか?」
人手不足への対応が議題となった26日の社保審・介護保険部会 ? 。委員からはそんな質問の声があがった。
厚労省の担当者はこれに対し、「ヘルパーさんは介護の中でも重要な業種の1つだと我々は認識している」と応答。「他のサービスに遅れることなくしっかりと対応していきたい」と述べ、ヘルパーの人材確保に努めていく構えをみせた。
厳しい人手不足の中でもヘルパーはとりわけ深刻、というのが業界の共通認識だ。これまで現場を支えてきた人材も、少しずつ一線から退いていっている。
厚労省の調べによると、2015年度の時点でヘルパーは50代以上が全体の61.6%にのぼっていた。60代以上が36.4%を占め、30代以下は15.5%しかいない。担い手の高齢化はかなり進んでおり、このままだと状況は悪化の一途を辿ってしまう。
訪問介護は地域包括ケアシステムの要で、ニーズが増大する今後はその重要性が一段と増していく。「介護離職ゼロ」を実現するうえでも不可欠なサービスだ。打開策がなかなか見えてこない現状に、「国はどうするつもりなのか」と首をかしげている関係者は少なくない。
 厚労省の担当者はこの日、「訪問介護は働いている方の年齢が高い。介護サービスの中でもより目を配っていかなければいけない」との見解を示した。現行の具体策の一例として、初任者研修などの受講費の助成を広く活用してもらうことをあげた。委員からは更なる賃上げの必要性を指摘する声も出ており、2021年度の次の改定をめぐる論点の1つとなりそうだ。   (介護jointニュース)

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