認知症街づくり

 認知症は、誰もが発病する可能性がある身近な病気です。東京都内の認知症高齢者は、2025年には約60万人に達すると推計され、認知症施策の推進が急務となっています。東京都では、区市町村や関係機関と連携し認知症の人とその家族が安心して暮らせる社会を実現するために様々な施策を推進しています。その中で、専門医療体制の構築、地域での見守り体制の整備、行方不明・身元不明認知症高齢者の情報共有サイトの運営、若年性認知症対策などについて紹介します。

 

なぜ認知症対策を進める必要があるのか
東京都の人口は2025年頃を境に減少に転じるものの、65歳以上の高齢者人口はその後も増え続け、2030年には都民の約4人に1人が高齢者となり、さらにその過半数は75歳以上の後期高齢者となると見込まれています。特に認知症の高齢者は、2013年の約38万人が2025年には約60万人と約1.6倍にも増加し、全高齢者の約2割が何らかの認知症症状を有すると推計されます。
一方、核家族化や少子化の影響により都内の世帯あたり構成人員数はすでに2を切っており、高齢者の独居世帯と夫婦のみ世帯の合計は136万世帯(2015年)に達しています。現在でも、認知症が疑われる人の約半数が独居または夫婦のみで暮らしている状況を考えれば、在宅サービスを充実し高齢者の方が希望する地域で安心して暮らせる体制を整備していくことが必要です。
東京都には、人口約89万人の世田谷区から、多摩地域で唯一の村である檜原村(人口約2200人)、さらには島しょ部にも9つの町村があるなど、様々な区市町村があります。すべての自治体において認知症対策は大きな課題であり、地域の実情に応じた施策を進める必要があります。

 

東京都における認知症施策の推進
2000年に制定された介護保険法では、区市町村が介護保険サービスの実施主体とされ、東京都は広域自治体として、区市町村の支援や医療体制の整備などを行ってきました。現在の認知症施策の基本は、2015年1月に国が定めた「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」です。

 

「認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる社会」を目指すこの戦略においては、認知症に関して、普及・啓発、適時・適切な医療・介護の提供、若年性認知症施策、家族への支援、やさしい地域づくりなど、7つの柱が示されました。これらを一体的に提供するために、保険者である区市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて構築しているのが「地域包括ケアシステム」であり、その窓口が区市町村が設置する「地域包括支援センター」です。
東京都では、3年毎に改定する「東京都高齢者保健福祉計画」の重点分野の一つとして認知症対策を位置づけ、年間38億〜40億円の予算を充てています。具体的には、認知症対策の推進、地域連携の推進と専門医療の提供、認知症の人と家族を支える人材の育成、認知症の人と家族を支える地域づくり、が4つの柱となっています。
このうち、認知症対策としては、認知症対策推進会議で具体的な施策を検討している他、都民向けシンポジウムの開催、パンフレット「知って安心認知症」による普及啓発、ポータルサイト「とうきょう認知症ナビ」による情報提供などを行っています。また、地域連携と専門医療の拠点として、島しょ部を除く全53区市町村で、認知症医療の診断や相談に加え、地域の医療機関や介護事業所への支援、かかりつけ医との連携などを担う「認知症疾患医療センター」の整備を進めています。(6市町村は設置予定)。また、センターと区市町村の連携などを担う「認知症支援コーディネーター」や、通院が困難な場合などに医師を含めたチームが訪問して受診につなげる「認知症アウトリーチチーム」が、認知症の早期発見・診断・対応を支援しています。
人材の育成については、国が開催する「認知症サポート医養成研修」に加え、東京都としても「かかりつけ医認知症研修」を実施しているほか、看護師、薬剤師、歯科医師、介護実践者などへの研修も行い、認知症への対応力の向上を促進しています。

 

 

行方不明・身元不明者対策として情報共有サイトを運用
認知症になっても自由に外出できる環境を整えていくことは、新オレンジプランの柱である「家族への支援」や「やさしい地域づくり」につながります。しかし、認知症の高齢者が徘徊中に事故に遭ったり、長期間身元不明で保護される方のケースは残念ながら都内でも発生しています。
そういった人を一人でも減らすため、東京都では、行方不明・身元不明者の早期発見に向けて区市町村の先行事例を他の自治体に紹介したり、区市町村・事業者・警察でのネットワーク構築に向けた検討を行ってきました。都と区市町村間の情報共有にはFAXやメールが使われてきましたが、より迅速性・確実性を高めるために、「行方不明認知症高齢者等情報共有サイト」を構築し、2015年より運用を開始しました。
富士通が担当した情報共有サイトは、行方不明者の家族が警察への捜索願と合わせて区市町村の地域包括支援センターなどに連絡すると、区市町村が情報登録を行います。掲載された情報は島しょ部を除く全区市町村で共有され、登録・照会が行えるほか、近隣6県や警視庁の担当者も照会できるので、越境した行方不明者の発見にも役立ちます。
個人情報を扱うため、非常にセキュリティが重視されたサイトになっていて、サイトを利用するには各自治体の個人情報保護審議会等での承認を必要とします。セキュリティの高さに加え、情報の登録・公開・更新・解除・絞り込み検索など、わかりやすい操作性が区市町村の担当者から評価されています。
このほか、認知症の人や家族を地域で見守るために、1時間半ほどの研修で認知症の知識を深められる「認知症サポーター養成講座」を区市町村で実施しています。居住自治体のほか職場単位でも受講できますので、興味のある方は区市町村にご相談ください。

 

64歳以下で発症する「若年性認知症」への対策
新オレンジプランの柱の一つ、64歳以下で発症する「若年性認知症」への対策も東京都が注力する事業の一つです。平均発症年齢が男女とも51歳余りで発症者の約6割が男性という若年性認知症は、働き盛りで発症するケースも多いため、継続雇用への不安、住宅ローン、子供の教育費などの問題が一気に押し寄せ、家族の不安も大きくなります。
東京都では若年性認知症対策にも国に先駆けて取り組んでおり、現在は相談窓口として目黒区と日野市に若年性認知症総合支援センターを設置して、電話相談のみならず、会社への説明への同席、医療機関への受診の付き添い、介護・年金などの手続きの支援も行っています。
若年性認知症は、家庭よりも先に職場で異変に気づくことも少なくありません。東京都では、企業の人事・労務担当者向けの「若年性認知症ハンドブック」を作成していて、2017年度に改訂予定です。また、職場における若年性認知症の人の理解・支援の機運を高めることを目的に、企業向けセミナーを開催する予定です。詳細が決まれば「とうきょう認知症ナビ」でご案内いたしますので、雇用側でもご関心を持っていただければと思います。

 

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