せん妄
せん妄とは意識混濁に加えて奇妙で強迫的な思考や幻覚・錯覚が見られるような状態。健康な人でも睡眠中に強引に覚醒されると同症状が発生する場合がある。特に術後患者や集中治療室(ICU)で管理されている患者によく発生するとされる。
医学用語としての具体的な定義はあるものの、あらゆる種類の錯乱状態を総称する言葉として使用されることもしばしばある
急激な精神運動興奮(カテーテルを引き抜くなど)や、問診上明らかな見当識障害で気がつかれることが多い。大手術後の患者(術後せん妄)、アルツハイマー病、脳卒中、代謝障害、アルコール依存症の患者にもみられる。せん妄とは治療も異なる振戦せん妄は、酒やベンゾジアゼピン系薬物からの離脱によって起こり区別される。
通常は対症療法が行われる。
一般に抗精神病薬が使われるが、その効果には議論がある。
症状
覚醒水準の低下の亢進、見当識障害、注意の散漫、判断力・集中力の低下、思考や気分の不安定化、錯覚や幻覚などの意識障害が発生し[3]、攻撃的になったり暴力を起こすこともある。突然生じ経過は短いが、命にかかわることもある緊急事態である。
高齢者にはせん妄がしばしば出現するが、その状態像は認知症と重なる部分が多いため、高齢者の軽い意識障害は仮性認知症と呼ばれる。せん妄の特徴として、発現が急性または亜急性であり、症状の発現に浮動性があり、夜間に増加する傾向があることから、せん妄と認知症の鑑別は時間の経過によって行われる。「入院した途端、急にボケてしまって(認知症のように見える)、自分がどこにいるのか、あるいは今日が何月何日かさえもわからなくなってしまった。」というエピソードが極めて典型的である。
また、高熱とともにせん妄を体験する場合があり、とくに子供に多い。大半の患者はせん妄を覚えており、苦痛な経験だったとの調査報告があり、せん妄は意識障害だから記憶がないというのは誤解である。
こういった症状をおこす、せん妄という病態の背景には意識障害、幻視を中心とした幻覚、精神運動興奮があると考えられている。
