世界への味と日本橋の昼下がり

先日、仙台でも行ったことのある世界的ラーメンチェーン店のことを思い出した。調べてみると、浅草橋にも店舗があるという。距離にして1.1キロ。うどん屋とほとんど変わらない。「ならば今日はそちらに行ってみよう」と歩き出した。屋形船が停泊している橋を渡ると、もう店の前だった。
仙台の店舗では券売機で注文する方式だったが、浅草橋では口頭注文、またはQRコードでスマホからのオーダー。システムの違いに少し驚いた。
狙っていたメニューは売り切れだったが、代わりに頼んだラーメンが運ばれてくるまでに15分ほどもかかった。出てきた丼には、厚さ5ミリを超えるチャーシューが2枚、さらに普通のチャーシューも2枚。白濁したスープの表面には、油の粒がきらめいていた。
ひと口すすれば、臭みのない濃厚な旨味が広がる。思わずレンゲが止まらず、「スープを飲みすぎると健康に悪い」と分かっていながらも、つい完食してしまった。日常のささやかな背徳感も、今日ばかりはご褒美のようなものだ。
かつてラーメンといえば日本の庶民の味、ちぢれ麺に醤油と胡椒の味だった。しかし今や、このチェーン店も豚骨をベースに「世界で最も売れているラーメン」として知られ、世界中の街角に店舗を広げている。
ふと、この会社の有価証券報告書の中で読んだ「事業の世界的展開、ファウンダー」という文字が頭をよぎった。
ラーメンという一杯の丼の中にも、グローバル経済の潮流が映っている。
日本橋浜町から浅草橋へ――わずか1キロの散歩が、いつしか“世界の広がり”を感じさせてくれる時間になっていた。時代は静かに、しかし確かに動いている。
