教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(税法上の特例)

1. 制度の概要
通常、個人間で金銭等を贈与した場合、贈与税が課されますが、教育資金の一括贈与特例を適用すると、一定の教育資金について1,500万円(学校以外は500万円)まで非課税で贈与できます。
この特例は、平成25年度税制改正により導入され、以降、数回延長・見直しされています。
(※現在の適用期限は延長の可能性あり。適用期限には注意が必要です)

 

2. 適用対象者
(1)贈与者(お金を出す人)直系尊属(父母または祖父母等)
(2)受贈者(お金を受け取る人)30歳未満の子、孫等
※受贈者は贈与時点で日本国内に住所を有している必要があります。

 

3. 非課税限度額
?学校等に支払う教育資金 → 1,500万円まで非課税
?学校以外(例:塾、習い事)に支払う教育資金 → 500万円まで非課税
学校とは、学校教育法に定める学校(幼稚園、小中高校、大学等)を指し、
塾やスポーツ教室等は「学校以外」と分類され、限度額が異なります。

 

4. 対象となる支出
(1)学校関係費用
?入学金、授業料、施設費、教科書代、修学旅行費など(学校に直接支払う必要があります)
(2)学校以外の教育費用
?学習塾やスポーツスクール、ピアノ教室等の月謝など
※対象外となる支出
?アパート・マンションの家賃(居住費)?通学用の交通費?日常生活費全般
これらは教育資金とは認められず、贈与税非課税の対象にはなりません。

 

5. 利用の手続き
1.贈与者と受贈者が、金融機関(信託銀行、銀行、証券会社等)で「教育資金贈与専用口座」を開設する
2.贈与者がその口座に一括で資金を拠出する
3.教育資金支出の都度、領収書等を金融機関に提出し、必要額を引き出す
※金融機関は領収書の内容を審査し、適正な支出であることを確認する義務を負います。

 

6. 制度終了・課税関係
(1)30歳到達時?受贈者が30歳に達した時点で、未使用残高がある場合、その残高に対して贈与税が課されます。(障害者の場合等、一部例外あり)
(2)受贈者の死亡?受贈者が30歳に達する前に死亡した場合、未使用残高は非課税で受贈者の相続財産に含まれず消滅します。

 

7. 注意点・リスク
?教育資金以外に流用した場合(生活費等に充てた場合)即時課税されます。
?定期的に金融機関に対し領収書等の提出が必要であり、怠ると非課税措置が取り消される可能性があります。
?制度終了の際、想定以上の未使用残高があると多額の贈与税負担が生じるリスクがあります。

 

【まとめ】
この特例は、祖父母等の財産を次世代に円滑に移転することを目的とした制度ですが、利用にあたっては、教育資金の定義や厳格な支払管理、年齢制限など細かな規定を正しく理解し、適正な運用を行う必要があります。
正しく活用すれば、贈与税を大きく軽減しながら、子・孫世代の教育を支援する強力な制度となります。

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